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2001.12.9 日本反核法律家協会 報告
早稲田国際会議、核フォーラム、IALANAなどの活動
浦 田 賢 治  IALANA副会長

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1 ハーグ平和会議記念

早稲田国際会議(8月1日−2日)

 

 ハーグ平和会議記念として早稲田国際会議を日本反核法律家協会主催で開催できたことを、心から感謝しております。

9ヶ国から23名の海外代表を迎え(スリランカ、ネパール、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、ノルウェー、オランダ、ニュージーランド)、総数は103名になりました。

 

 会議そのものは、国際司法裁判所の勧告的意見の意義を今の時点で改めて問うものです。

@ウィラマントリー氏の講演

  ウィラマントリー氏の反対意見が全訳されていますが、これは非常に貴重な資料です。同氏が法廷意見(多数意見)を高く評価しながらも、とりわけ2点においての反対を明確に述べていることがはっきり分かるようになりました。この反対意見と比べ、今回の早稲田大学などでの講演は、啓蒙版として、特に法律家の役割、市民の役割が強調されています。

A国際司法裁判所の勧告的意見の積極的影響

  積極的影響について、アメリカ、イギリス、カナダ、オランダなどではどうかということを検証しました。これは他のところではなされていない成果であると思います。

B核兵器廃絶と法、あるいは21世紀の戦争と平和、法の支配について話し合いました。

 

〇プレ企画:ピーター・ワイス・IALANA会長の講演(7月31日)

  ピーター・ワイスの講演「国際司法裁判所とスコットランド最高法院:2つの核兵器違法論」は、イギリスのフィル・シャイナーが取り上げた「トライデント・プラウシェアズ」の活動の成果がスコットランド最高法院で国際法レベルで覆されていることから、その最高法院の核兵器適用論を批判的に論じたものでした(フィル・シャイナーの論文は早稲田国際会議事務局刊行の資料集Uに掲載)。

 

〇出版活動

  こうした成果を出版物として発表することになります。IALANAの国際事務局の方でも、来年早々に「イアラナ・アップ・デート」に集約するということです。

日本の報告者の文書で既に英文に翻訳された報告は、「下田事件判決と核兵器勧告的意見の比較的考察」(山田寿則/小倉康久)、「被爆者の日本の裁判所における闘い」(宮原哲朗)などがあります。

出版物を出すには、新しさがいまひとつ欲しいということもありまして、少し時間をかけて検討したいと思います。

(早稲田国際会議事務局が7月に刊行した資料集T、Uの目次は、反核法律家42号参照)

 

 早稲田会議に参加した海外代表は広島、長崎の会議に参加し、大変よい印象を持って帰られたと聞いています。これだけ大規模な会合は、おそらくIALANA始まって以来のことでしょう。それだけに、今後被団協が提案されている国際法廷などについて、日本反核法律家協会の貢献が生きていくように希望しております。

 

2 核フォーラム

 

 核フォーラムは1997年春に始まり、月例会として活動を続けています。核フォーラムが生まれたきっかけは、96年7月に出されたICJの勧告的意見の中に市民が予想していなかった「核兵器廃絶条約の締結を」という項目が入ったことです。

これを受けてIALANAが他の団体と一緒に「モデル核兵器条約」づくりを開始したことから、条約草案の検討、条約の翻訳を行い、300部の限定版を作りました。その後改訂版がでていますので、2000年11月の「核兵器廃絶:地球市民集会ナガサキ」集会の成果を付け加えて出版したいと考えています。

 

 また、核フォーラムに参加されている多くの方々が、松井康浩・前会長の喜寿のお祝いの論文集「非核平和の追求」(日本評論社 1999年)や、現在進めているICJの勧告的意見に関するジョン・ボローズの本の翻訳と出版に関わっておられます。

 

3 IALANAと9.11事件

 

 まず、ピーター・ワイス・IALANA会長が9.11事件に対する対応は法に基づくべきであるとの見解を発表しています。9.11事件は犯罪であるが、それに対する対応が「自衛権の行使」という戦争行為であってはならない、国際法でいうところの「戦争をする権利の行使」であってはならない、従っていまも行われている米軍による攻撃は国際法違反であるとしています。また、反撃として武力行使をするとしても国際人道法に従わなければならず、その国際人道法に照らしてもいま行われている米軍の攻撃は違法である、と明確に述べています。

 

 一方、リチャード・フォーク教授(ハーバード大学、憲法学、IALANAのメンバーではない)は、週刊誌「ネイション」に数回にわたり見解を発表し、初回は、9.11事件は抑圧された民衆の新たな戦闘行為であり、それに対する反撃は正当であるというニュアンスのことを書き、その後、アメリカ軍による攻撃は正しい戦争の遂行であると明言しました。ピーター・ワイスが反論を寄せると、自分は一貫しているつもりだが、「正戦である」という考え方をもう一度とらえ返したいと。ピター・ワイスは、味方の陣営の中でも「これは正戦だ」という人に対して、ブレーキをかけるという働きをしています。

いまや、ブッシュ大統領はタリバン政権の主要人物やビン・ラーディンを匿った人々を軍事法廷で裁くと主張し、ハーバード大学の憲法学者なども支持するようになっている、動揺しているんですね。

 

 そういう中で、IALANA理事会でもメールで意見を交換しています。理事会を開いて対応すべきだという意見も出ていますが、ピーター・ワイスなどは、いま正式な理事会を開くことは難しい状況だとしています。

 

** IALANAのホームページ **

http://www.ialana.org/site/index.html
には、9月19日のピーター・ワイスの「War:Metaphor into Reality」など会員の意見が紹介されています。