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2001.12.9 日本反核法律家協会 資料

核兵器廃絶市民連絡会による
政党へのアンケート調査(2001年 7月)結果
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核兵器廃絶市民連絡会は8月10日の「核軍縮 市民と外務省との対話」集会(衆議院議員会館内会議室で開催)に向けて、政党に対し核軍縮政策に関するアンケートを行いましたが、回答は以下のとおりでした。

質 問

 

1 包括的核実験禁止条約(CTBT)に関して

特に、アメリカの対応に関わらず、2000年の国連核軍縮日本決議案で示した2003年発効をめざすのか、NIFや未臨界核実験についてどのように考えておられるかなどに、触れてください。

 

2 ミサイル防衛問題に関して

  特に、アメリカが進めるミサイル防衛に賛成か否か、また、それが将来の核軍備競争にどのような意味を持つのかについて、貴党の考えをお示しください。

 

3 北東アジア非核地帯問題に関して

  日本政府が、ただちに北東アジア非核地帯の設立をめざす政治宣言をすることに賛成か、もし時期尚早ならその理由を明示してください。

 

 

 

回 答(回答順)

 

保 守 党

1 包括的核実験禁止条約について

 2003年発効を目指す。NIFや未臨界核実験についても、縮小を求めていく。

 

2 ミサイル防衛問題について

 弾道ミサイルの拡散が世界の安全保障上の深刻な脅威になっている。これに対処するため、日米両国は共同で弾道ミサイル防衛に関する技術研究をすすめている。引き続き研究をすすめていくべき。ブッシュ政権は、従来のNMDとTMDの区別をやめ、米国、同盟国、在外米軍等を防衛するためのミサイル防衛を構築することを表明している。この構想については、日本の専守防衛という方針を踏まえつつ、慎重に対応すべきである。

 

3 北東アジア非核地帯問題について

 世界には多量の核兵器が存在する、日本が日米安全保障条約によって、米国の核の傘に守られている、北東アジアには中国、北朝鮮という核保有国が存在する、等の現実を踏まえれば、北東アジア地域非核地帯構想は時期尚早というより、非現実的と考える。

 

自 民 党

1 包括的核実験禁止条約について

 わが国が、唯一の被爆国として去年の国連総会に提出・採択された「CTBTの2003年までの発効を求める決議案」に則り、早期発効を目指して外交的リーダーシップを発揮することは当然です。現在77国が批准していますが、核保有国中で批准しているのは英、仏、ロの3国だけであり、米中を始め、発効に必要な残り13国の批准を粘り強く説得していく必要があると考えております。

 

2 ミサイル防衛問題について

 同盟国として米国の安全保障政策上の選択として認識しています。今後は、ブッシュ政権において、ミサイル防衛構想の推進の伴い、ABM条約への対応がどう推移するのか注意深く見守っていく必要があると考えています。軍縮・核不拡散の国際的努力が後退しないようわが国が果たすべき役割と責任は大きいと承知しています。

 

3 北東アジア非核地帯問題について

 まったく検討しておりません。

 

日本共産党中央委員会

〈はじめに〉

 昨年の核不拡散条約再検討会議は、核兵器廃絶をもとめる声が国際世論ばかりか、国際政治の場でも多数を占めるようになったもとで、最終文書の核軍縮の13項目の措置のなかで、「核保有国が核兵器の完全廃絶を達成するという明確な約束」が、満場一致で合意されました。残念ながら、日本政府は、核兵器廃絶を先送りする「究極廃絶」論にたって、きわめて否定的な役割を果たしました。いま求められていることは、13項目にあげられた核軍縮措置の推進とともに、核兵器廃絶それ自体を主題とする交渉開始など、この「約束」を現実に実行させていくことだと考えます。

 

1、包括的核実験禁止条約(CTBT)に関して

 私たちは、包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択されたことを歓迎し、そのすみやかな発効を求めています。また、核兵器廃絶のためにも、未臨界核実験などもふくめた、あらゆる形態の核実験の禁止、核兵器の研究・開発の禁止をもとめていくものです。

 CTBTの発効のもっとも大きな障害となっているのが、ブッシュ政権の態度です。この発効には、核保有5ヵ国の批准が欠かせませんが、アメリカは批准を棚上げし、「死文化」させようとしています。

 この背景には、新型核弾頭の実験・開発を、いっそう自由に行い、核戦力の絶対的優位を確保しようとするブッシュ政権の思惑があります。現在すすめられているNIFの建設や未臨界核実験などは、包括的核実験禁止条約の精神に反する核兵器の実験・開発に他なりません。

 それだけに、こうしたアメリカの態度を国際的な世論で包囲し、転換させていくことが、重要となっています。日本政府は、CTBT発効促進会議の議長もつとめ、「2003年の発効」を目標にしており、ブッシュ政権にたいし、CTBT批准にすすむよう、正面から迫る、特別の責務を負っています。

 

2、ミサイル防衛問題に関して

 ブッシュ政権がすすめるミサイル防衛(MD)は、「防衛」という名とは裏腹に、他国からの弾道ミサイルを「無力化」することで、先制的な核攻撃能力を強化し、絶対的に優位な核戦力の確立を目的にしたものです。私たちは、核兵器を武器に世界の覇権をめざす、こうした危険な戦略には絶対反対です。また、自国兵器が「無力化」されるとなれば、対抗して弾道ミサイルを強化するなど、新たな核軍拡につながりかねません。

 ブッシュ政権のMDは、従来の全土ミサイル防衛(NMD)と戦域ミサイル防衛(TMD)を一体にしたものだといわれています。そうなれば、これまで「TMDは専守防衛の研究」だとしてきた日本政府の言い訳は成り立たなくなり、憲法が禁じる集団的自衛権の行使にまでふみこむことになります。

 日本政府は、核兵器廃絶に逆行するという点でも、憲法の平和原則をふみにじるという点でも、ミサイル防衛構想への参加・協力をきっぱりと拒否すべきです。

 

3、北東アジア非核地帯問題に関して

 東南アジア非核地帯条約を実現するためには、アメリカが自由勝手に日本に核兵器を持ち込む仕組みをなくすことが不可欠です。

 アメリカが日本に核兵器を持ち込む密約の存在が、わが党の国会での追及で動かしがたいものになっています。「事前協議」があるので核兵器は持ち込まれない、という日本政府の説明は、まったくのゴマカシで、日本政府も国民も知らないうちに核兵器が持ち込まれる状況が今日も続いています。アメリカは、いまでも「有事」には「核の再配備」をおこなうという体制をとっています。したがって、北東アジアの非核地帯を実現するためには、日本政府にこの核密約の全ぼうを明らかにさせ、核持ち込みの仕組みをなくして日本の非核化を内外に明確にすることが必要です。

 

社 会 民 主 党

(文責・社民党全国連合政策審議会 野崎)

1、包括的核実験禁止条約(CTBT)に関して

 CTBTの発効は1995年のNPT再検討・延長会議で無期限延長を決めた際の国際的な約束事であり、ブッシュ政権による「死文化」は断じて認められない。米の批准を強く求め続け2003年までの発効を目指すべきである。そもそもCTBTの内容は十分なものとはいえないが、これは米国ら核兵器国に対する妥協によるものであり、交渉の経緯を考えればブッシュ政権の独善的な態度は許されるものではない。

 NIFや未臨界(臨界前)核実験はCTBTの理念にも明らかに反するものであり、核の垂直拡散につながることは明らかであるから、認められない。

 

2、ミサイル防衛問題に関して

 ブッシュ政権が推進するミサイル防衛構想には反対である。相互確証破壊理論による恐怖の均衡が時代遅れであることは事実であるが、ミサイル防衛構想はこれに変わる安定した国際関係をつくるものとはなり得ない。米国が一方的にミサイル防衛を進めれば、新たな核軍拡競争につながることは必至であり、現行の核不拡散の枠組みの崩壊にもつながりかねないと考えている。

 

3、北東アジア非核地帯構想に関して

 日本政府がただちに北東アジア非核地帯の設立をめざす政治宣言をすることに賛成である。ただし米国の「核の傘」に依存する現在の日本の核政策が変わらないままであれば、言行不一致ととられ国際的な賛同が得られない可能性も高い。宣言とあわせて、日本の安全保障政策を変更させていくことも必要だと考えている。

 社民党はすでに、北東アジアに「北東アジア総合安全保障機構」を創設して日米関係への過度の依存を排した多極的な安保体制を構築し、非核地帯条約を締結することを提案している。当面は、日本、韓国、北朝鮮、モンゴルの4ヵ国による非核地帯が現実的と考え、土井党首が各国を訪問するなどして具体的な働きかけを進めているところである。

公 明 党

1 包括的核実験禁止条約について

 2003年発効を目指し、包括的核実験禁止条約への各国の署名を推し進めることが大切です。さらに核保有国の核兵器削減に向けての交渉進展を促進します。またこの条約を批准したわが国としては、NIFおよび未臨界核実験については断固反対すべきだと考えます。

 

2 ミサイル防衛問題について

 米国自身がミサイル防衛構想を推進することは結構だが、その際、ロシアや中国にも協議や配慮を行いながら推進すべきであると考えます。

 

3 北東アジア非核地帯問題について

 被爆国として北東アジアにおける非核地帯構想を提案し、その具体化へ向けての対話をまず行うべきであると考えます。

 

民 主 党

1 包括的核実験禁止条約について

 唯一の被爆国であるわが国は、国際的な核軍縮の動きに対しては、特にリーダーシップを発揮していく分野であると考えます。その意味で、CTBTの速やかな発効を目指すべきことは当然ですが、核保有国、特に米ロ両大国の責任はきわめて重いと考えます。

 アメリカでは、クリントン政権下の上院において、条約の批准を否決したのを始め、ブッシュ政権下ではより消極的な対応となっていますし、CTBTの枠外として、未臨界実験も強行しました。ご指摘のNIFでもCTBTの規制の外にあるとして、核融合に関して研究を行っています。またロシア下院ではCTBTの批准の手続きは行いましたが、未臨界核実験は枠外とするなど、核軍縮の行方についてはまだまだ不透明です。先のインド、パキスタン両国の首脳会談は歓迎すべきことですが、両国とも核実験を実施したことは記憶に新しく、懸案のカシミール問題の解決は予断を許しません。

 民主党は核廃絶を究極的な目標としており、その理由は第1に、核兵器は戦闘員と文民を区別しない無差別大量破壊兵器であり、国際人道法上認められない非人道的な兵器であること。第2に核兵器のような破壊力の大きい兵器を保有することは、人為的なエラーの可能性が払拭できないこと。第3に、唯一の被爆国として、核兵器使用による被害を現実に体験していることであります。しかしこのような真摯な思いとは逆に、世界は核軍縮交渉の停滞と核拡散の危機に直面しています。ここで思いを新たにし、改めて核廃絶を究極の目標とし、着実な核軍縮を実行していくことこそが最重要課題だと考えます。

 

2 ミサイル防衛問題について

 慎重に対処すべきだと考えます。

MDとは、飛来する弾道ミサイルを人工衛星、レーダーなどで探知・追尾し、これを迎撃・破壊するためのシステムであり、日本はその一部をなしたTMDに関しては、日米共同の技術研究に着手しています。

今回、ブッシュ大統領は、今まで細分化されていたシステムをミサイル防衛として統合しようとしていますが、そういったシステムがすでにわが国が参加している技術研究にどう影響するのか、集団的自衛権との関係はどうなのか明らかになっていません。また、中国、ロシア、ヨーロッパ諸国が指摘する意見、特に自国の兵器体系を無力化、軍拡競争を煽るなどの否定的な意見をどう評価するのかも慎重に検討する必要があります。そのほか、費用対効果はどうか、技術的な問題は解決されるのかなどの問題も指摘されています。

 一方、現実のミサイルの脅威にどう対処するのか、湾岸戦争における政治的戦略的効果をどう評価するのか、慎重論のそれぞれの具体的背景や思惑、相手が撃ってこなければ発動されないという抑止的効果なども指摘されています。さらには、核不拡散との関係をここで取り上げる向きもあります。

 いずれにせよ、今挙げた問題点が明らかになっていない現段階においては、慎重に対処すべきだと思います。

 

3 北東アジア非核地帯問題について

 賛成する。

 民主党はすでに「北東アジア非核地帯構想」を提案しているからです。すなわち日本、韓国、北朝鮮が核兵器を開発、製造、保有、配置、使用しないことを約束するとともに、核エネルギーの平和利用を検証するための相互査察を行うこととする条約の締結です。また米国、中国、ロシアなどの核保有国にもこの地域における核の使用や威嚇を行わないことを認める旨議定書の締結を求めるべきこととすべきです。

 これらの考え方の基礎となるものとして、すでに1991年に「朝鮮半島の非核化に関する南北朝鮮の共同宣言」が確認されています。また1994年の米朝合意においても、米国は北朝鮮に対して核兵器で威嚇したり核兵器の使用を行わず、北朝鮮は朝鮮半島の非核化を推進するとの方向での確認がなされています。

 これらの合意を基礎としつつ、日本も含めた北東アジア非核地帯構想を実現することは、この地域の安定に極めて大きな貢献をなすことになります。具体的な手順としては、正式の条約とするためには日朝間の国交正常化が前提となりますので、まず日韓両国が中心となって、北朝鮮、米国、中国、ロシアを加えた6ヶ国で、北東アジア非核地帯に関する共同宣言を行うことを目指すべきです。この共同宣言がなされることは、日朝両国間の国交正常化交渉を推進する役割を果たすことも期待されます。

 

自 由 党

( 自 由党 政 策 調 査 会 )

1 CTBTについて

早期発効を支持します。未臨界核実験が禁止されていないなどの問題がありますが、まず早期発効に向けた対話の促進に努めるべきであると考えます。

 

2 ミサイル防衛について

アメリカの構想自体がはっきりしていないため、それに対する党としての見解を述べる段階ではないと考えております。

 

3 北東アジア非核地帯問題について

 現段階で現実味のある考え方とは思われません。この問題は北東アジアにとどまらず、全世界の安全保障体制の構築と切り離して語ることはできない問題であり、慎重に検討すべきであると考えます。

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発行:核兵器廃絶市民連絡会  2002年1月16日  販価:200円(送料別)

? 市民側オリエンテーション 「NPT13項目と核軍縮」梅林宏道 (ピースデポ)

? 国会から     土肥隆一・衆議院外務委員長

? 市民から外務省への質問と意見交換 

・CTBT問題 ・ミサイル防衛問題 ・北東アジア非核地帯

? 資料 ・NPT再検討会議最終文書紹介 ・政党アンケート

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