■■■ 非核三原則の堅持を求める声明 ■■■

 安部官房副長官の「憲法上は核兵器を保有できる。」との発言に続いて、福田官房長官は「非核三原則」の見直しがありうるとの見解を示した。「非核三原則」は憲法と同程度の国是であるが、憲法の改正も取りざたされているのだから、「非核三原則」の見直しもありうるという文脈であった。小泉首相は「あれはどうっていうことはない。」との認識を示している。
 官房長官は、その後「現内閣において、非核三原則の変更や見直しを考え、あるいは今後の課題として検討しているということは全くない。」と弁明したが、我が国が核武装も念頭においているのではないかとの疑念を国内外に抱かせる事態となっている。
その弁明は、「現内閣において」との言い方であり、小泉首相もこの発言の重大性には無頓着のようである。政府は、核兵器の使用禁止と核廃絶のために真剣に取り組むのではなく、むしろ、核兵器の保有と使用を合理化しようとしているといえよう。
 インドとパキスタンという核保有国が一触即発の状況にあり、「有事法制」をめぐって日本の軍事大国化に危惧の念が抱かれている状況の中で、「非核三原則」の見直しを認めるような発言は、単に無責任というだけではなく、日本政府の核兵器容認の本音が露呈したと見るべきであろう。NPT(核不拡散条約)の締結国としての条約上の義務履行意思を疑われるだけでなく、北東アジアに新たな緊張をもたらすことにもなるであろう。そして、世界で唯一の原爆攻撃を受け、原爆被害の非人道性を体験した国の政府としての立場を完全に放棄し、被爆者と人類の期待を裏切るものである。
  国際司法裁判所は「核兵器による威嚇とその使用が一般的に国際法に違反する。」との勧告的意見を表明しているし、核兵器と人類が共存できないというのは、国際社会の共通の認識である。
 私たちは、核兵器の使用禁止と核兵器の廃絶を求める法律家として、日本政府に対し、「非核三原則」の堅持と「核抑止論」から直ちに脱却することを要請する。

                                                       2002.6.5
                                        核兵器の廃絶をめざす日本法律家協会