■◆■◆■IALANA 広島会議 国際シンポジウム■◆■◆

東アジアにおける平和の創造



日時:20001年8月4日 13:30−17:30 
場所:広島弁護士会

   主 催: IALANA、日本反核法律家協会 
   後 援: 広島市、核戦争防止国際医師会議広島支部、広島弁護士会


君島東彦 日本反核法律家協会
 
この部屋は冷房能力の限界のようで、暑くて申し訳ありませんが、おつき合いください。
 今日のシンポジウムは東京の早稲田大学で行われた国際会議「核兵器廃絶と法」と密接な繋がりを持っています。シンポジウムの主旨は、東アジアにおいて日・米・韓の軍事力、軍事的プレゼンスによらずに、どのように平和的な秩序をつくるかということだと思います。日・米・韓の軍事同盟に代わるどのような平和的なオルタナティヴがあるか、その時には非核地帯が問題になると思いますし、包括的地域的安全保障の枠組みの可能性、アジアの他の地域における地域的安全保障の努力、これに関連していまNGOが主張している「戦争防止地球プログラム」がありますが、それについて東アジアでどのような可能性があるかなど考えてみたいと思います。


座長・ジョン・バローズ・核政策法律家委員会の事務局長
・岡本三夫・広島修道大学教授、(元日本平和学会会長)
報告者・梅林宏道・NPO法人ピースデポ代表、太平洋軍備撤廃運動国際コーディネーター
・井上正信・広島弁護士会所属弁護士
・ゴパル・シュワコティ・チンタン ネパールの弁護士
・ソウル・メンドロヴィッツ 米国のラトガーズ大学ロースクール教授(ダク・ハマー
ショルド・プロフェッサー)、IALANAの国連担当、「戦争防止地球行動」の創設
者、坂本義和さんとともに「世界秩序モデルプロジェクト」の共同代表。

岡本三夫 広島修道大学教授
 
昨日朝日新聞と広島平和文化センターの共催で行われたシンポジウムに参加されたウィラマ
ントリー・前ICJ判事がお見えですのでご紹介します。

●報告 1 東北アジアの非核地帯●
梅林宏道  NPO法人ピースデポ代表、太平洋軍備撤廃運動国際コーディネーター

私の述べる非核地帯とは厳密な意味で非核兵器地帯です。非核地帯というのは人類が作り出した最も破壊的な兵器である核兵器を制限しようとする国際的、あるいは地域的な努力のあらわれです。しかし、同時に、国際的、地域的な様々な歴史を持つ地域の安全保障に重要な役割を果たすという意味があります。東北アジアでも例外ではありません。私が東北アジア非核地帯の重要さをいま力説するのは、まさにこの地域の信頼醸成を前進させ協調的な地域の安全保障づくりを発展させるために、非常に現実的な第一歩になると信じるからです。

-世界の非核地帯-
ラテンアメリカ非核地帯条約、南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)、東南アジア非核地帯条約(バンコック条約)、アフリカ非核地帯条約(ペリンダバ条約)、南極条約が加わり、南半球がほぼ非核地帯になっています。現在113ヶ国が非核地帯の中に含まれ、地球の陸地の50%以上が非核地帯になっています。現存する全ての非核地帯に共通する最低限の要件が3つあります。

@ 地帯内の核兵器の開発・実験・製造・生産・貯蔵・輸送(陸地輸送と内水における輸送)・配備などを禁止するということです。これは核兵器の不拡散と不配備という内容を持っています。

A 地帯内での核兵器による攻撃の威嚇を禁止している。これは消極的安全保障と言われてい
ます。

B この条約遵守のための機構を設置している。

 このAに注目したい。非核地帯と言うとき、核兵器不拡散と不配備に関する義務のみを連想しがちですが、実際には、現存する非核地帯は、全て、核兵器保有国に核攻撃、核攻撃の威嚇をしないという消極的安全保障を求める議定書を持っているということです。全ての核兵器保有国による消極的安全保障が発効すると、非核地帯は法的拘束力のある非核の傘の下に置かれるということになります。

-東北アジアの非核地帯の歴史-
この歴史を簡単に辿ってみます。古くから名前として構想はあるが、具体的な地帯の提案は、冷戦後、ごく最近、公になりました。
 95年にジョージア工科大学の国際戦略研究所のエンリコット教授らの研究グループが、数年にわたる共同作業の結果として、「限定的東北アジア非核地帯」という提案をしました。彼らが最初に提案した構想は、朝鮮半島の非核地帯を中心に半径2000キロメートルの円内を非核地帯にするというものでしたが、専門家同士の議論により、戦術核のみに限って合意できた。つまり、戦略核を交えたときには合意できなかった。その意味で、「限定的」という言葉を付けています。このエンリコット案を更に発展させて、アメリカの一部を含むような楕円形の限定的非核地帯案も同時に示されています。
 これとは別に、金子熊男・東海大学教授(元日本外務省原子力課長)が、先ほどの円形案を限定的ではないアプローチとして提案されています。
 次に、オーストラリア大学のアンドロマックさんが南北朝鮮、日本、台湾を非核化する提案をされました。
 そうした議論を踏まえて、96年5月に、私は、この地域の緊張感を解くために、もっと現実的で地域で蓄積している様々な成果を基礎にして非核地帯をつくる「スリー・プラス・スリー案」を提案しました。日本・南北朝鮮が非核地帯条約を結び、ロシア・中国・米国という核保有国がその地帯を尊重し、この地域に対して、核攻撃、核攻撃の威嚇をしないということを約束する。もちろん核配備はしないというような条約をつくるという案です。
 エンリコットさんたちも、先ほどの円形、楕円形案ではなかなか合意しないということで、97年には非核国家が先に非核地帯をつくるための国家連盟をつくるのが良いのではないかという提案をされました。
 現在は、非核国が先行して非核地帯をつくるアプローチについて、ほぼ皆さんが出発点を共通にしているのではないかと思っています。

-東北アジアでこうした非核地帯を持つ意義について-
 第1に、朝鮮半島から見たときに日本の、日本から見たときに朝鮮半島の、核兵器開発疑惑を非核地帯条約が当然備えるべき検証制度の元で確かめることができる。このことによって、疑心暗鬼から増幅される可能性のある日本の核武装論とか韓国の核主権論などを未然に防止できる。

 第2に、日本が軍拡の論拠として絶えず表明している中国に対する不信感、中でも中国の核政策の要点である非核国には無条件に核攻撃しないという安全の保障を法的拘束力のあるものにすることができます。ロシアに対しても同様です。北朝鮮にすれば、94年の米朝枠組み合意の中でアメリカとの間にアメリカが核兵器による威嚇も使用も行わないという約束をしているわけですが、この約束を法的拘束力のあるものにすることができます。このことによって地域の軍縮が容易になるということが言えます。

 第3に、生物・化学兵器の禁止は非核地帯の直接の要件ではありませんが、非核地帯づくりに合意するとすれば、当然協議されていく事項となると考えられます。核兵器と違って既に生物・化学兵器を禁止する国際条約が存在しており、これらの国際条約との関連で議論するということになります。この協議の機会が、非核地帯を進めることによって与えられる。これは大きなメリットだと思います。

 第4に、非核地帯条約ができると、そのもとで条約の実効機関ができ、そこにおいて核兵器問題のみならず広範な安保問題を議論する場になりうる。日本の侵略戦争、植民地支配と謝罪なき戦後と言われるものが生み出している深い不信と将来不幸な争いに発展しないような透明
性の高い協議の場が、ここで確保されていくということになると思います。

 冒頭で君島さんから話しがあったように、現在、旧態依然たるアメリカ、米軍依存の安保構想がこの地域で存続しているわけですが、そこから脱皮して、新しい協調的地域安全保障への出発点となるということになります。以上のようなメリットは、最も一般的な要件を備えた保守的な東北アジア非核地帯ができたとしてももたらされると思います。

-東北アジア特有の問題-
 第1に、日本のプルトニウムの問題です。1994年の米朝枠組み合意は、北朝鮮に対して92年の南北非核化共同宣言の実行を求めています。非核化宣言の1つの項目は、プルトニウムの再処理施設、ウラン濃縮施設を南北共に持たないという内容を含んでいます。従って、現在進行している朝鮮半島エネルギー機構プロセスが完了した暁には、南北朝鮮はこの合意の条約化という段階を迎えると思います。朝鮮半島だけプルトニウムをつくれない、ウラン濃縮もできないということを約束し合って、彼らが最も警戒している日本がその能力を持ち続ける、巨大
なプルトニウム経済が放置されているということになりますと、非核化そのものが先に進めなくなるだろうと予測されます。従って、日本を含めた非核地帯化を考えざるを得なくなる。これがこの地域の非核化を考えるとき欠かせない問題であると思います。

 第2に、核兵器への依存政策という問題です。非核地帯への参加は、必ずしも安全保障を核兵器に依存しないということにはなりません。日本が非核地帯に属しつつ、アメリカの傘に依存するという政策も論理的にはあり得ます。核攻撃に対して非核地帯は消極的安全保障で攻撃されない保障があるが、その他の攻撃に曝される可能性がある。それをアメリカの核兵器で威嚇、報復してもらうということを前提にして、安全保障を考えようという考え方がある。これは、私たちから言わせると、新しい核兵器の使い方であり、核兵器以外の攻撃に対して核兵器を使わせる政策を採択することになります。これは、昨年のNPT再検討会議で日本を含む全ての国が約束した内容、つまり核兵器の役割の縮小に違反します。新しくつくる非核地帯条約は、核兵器以外の攻撃に対して核兵器を使うことを許してはならず、安全保障政策の一切において核兵器に依存しないということを盛り込むべきだと思います。

 第3に、核搭載軍艦の寄港、一時通過の問題で、日本に関しては歴史的な大きな課題です。
日本政府は、非核三原則によって核搭載軍艦の寄港を一時寄港でも認めていないということを主張し続けています。非核地帯としては、核搭載軍艦の寄港を制約していず、それは個々に任せられており、ニュージーランドなどは自国の法律で禁止している。東北アジアで非核地帯を考えようとするとき、日本の市民は非核三原則よりも緩い非核地帯をつくることに賛成しないだろうと思います。ですから、ここで軍艦の寄港も含めた非核地帯を議論せざるを得ないというのが、この地域の歴史的経緯です。

 第4に、東北アジア非核地帯は核攻撃によって生み出された大量の被爆者が存在するはじめての非核地帯です−南太平洋非核地帯は核実験による被害者を含みますが−。東北アジア非核地帯をつくるときは、被爆の実相を自国の市民と世界に伝え続ける義務規定を条約の1項目として持つということが、当然の議論になっていくだろう。これは韓国、朝鮮民主主義共和国にとっても同様の問題として存在しています。

 これを実現する政治的なプロセスに関しては、既に様々な協議チャンネルがあることを指摘したい。KEDOプロセス、南北会談、ミサイル協議を含む米朝会談があり、日朝正常化会談を急ぐという課題があり、南北朝鮮・米・中四者協議もあります。ASEAN地域フォーラムでこの全ての当時者が集まる仕組みも作られています。こういうプロセスの進展の中に、いつどういう形で非核地帯の問題をテーブルに乗せられるか。私たちは絶えずそのチャンスを窺い、日本においては、日本政府を動かすことが課題になっていると思います。


●報告2 北東アジア:地域的安全保障機構の提案●

井上正信 弁護士


 コスタリカのヴァルガスさんが来日できなくなり、ピンチヒッターとしてお話をすることになったため、英文のペーパーが用意できませんでした。
 朝鮮半島問題は20世紀後半の日本の国内、国際政治を大きく規定してきた問題でした。現在朝鮮半島は歴史的なチャンスを迎えて、和解と平和統一に向かおうとしているわけで、わが国の安全保障政策に根本的な再検討を迫るものになっています。
 ところが、わが国の政策はこの流れに逆らっています。いわゆる「新ガイドライン路線」と言われる軍拡路線を突き進んでいるわけです。わが国は北東アジアの安全保障環境を悪化させて、朝鮮半島の歴史的チャンスに対する阻害要因になろうとすらしていると思われます。このことは、私たち日本人だけでなく、北東アジアの人民にとっても重大な影響を与えるのではないかと懸念されるところです。私たちが朝鮮半島情勢の好転を確かなものにして、さらに北東アジア全体に及ぼすことができれば、21世紀の北東アジアの平和と安定が展望できるでしょう。

 既に、米国は21世紀の国際情勢の変化を見据えた安全保障戦略の再検討を活発に行っています。2000年秋に二つの論文が発表されました。アメリカのカード・キャンベル前国防次官補の論文「米日安全保障−パートナーシップの活性化」、アメリカの国防大学国家戦略研究所が発表した「米国と日本―成熟したパートナーシップに向けて―」です。2000年5月に発表されたペンタゴン文書「ジョイントヴィジョン2020」も二つの論文と同じ基調になっています。これらのものは21世紀前半の米国の安全保障戦略にとって、伝統的なヨーロッパ重視からアジアに重点を移して、特に米国の覇権に挑戦する国として中国を念頭に置いているものです。

 わが国は紛れもなくアジアの大国です。21世紀の北東アジアの国際環境において、日本・アメリカ・中国の3ヶ国関係をどう築くのかが決定的に重要になっています。しかし、わが国政府にも、私たち国民の間にも21世紀を見据えた羅針盤、つまり国家戦略がありません。そのために北朝鮮の出来損ないの弾道ミサイルの破片が日本の上空を飛び越えたり、あるいは北朝鮮の2隻の不審船が日本の領海近くをウロチョロする、あるいは中国の艦船が日本の経済水域を航行する、これだけで大騒ぎをする。そして、外交問題にまで発展させてしまう。これに比べて韓国の金大中政権は将来の朝鮮半島の和解と平和統一をしっかり見据えた太陽政策という羅針盤があります。そのため北朝鮮の小型潜水艇が韓国の領海を侵犯し、あるいは北朝鮮と韓国の海軍の艦艇が銃撃戦をやっても韓国の太陽政策は変わりません。そのことが昨年6月の南北首脳会談に繋がる結果を生んでいるわけです。
 このままでは、日本は再び90年代の安保再定義の二の舞を21世紀にしてしまうでしょう。それは、アメリカの戦略である二面性、関与戦略と封じ込め戦略の内、日本は軍事的な封じ込め戦略の槍の役割だけを背負わされる。そして最後には二階に上がってアメリカに梯子を取られるという損な役割を演ずるかもしれません。

 アジアの諸国にはわが国に対する不信感や脅威論が根強くあります。それは、わが国によるかつての侵略戦争、植民地支配の歴史とそれに対するわが国の正しい過去の清算が行われていない、加えて憲法の平和原則を改悪しようとする動き、軍事力の増強、不透明なプルトニウム政策などであります。
 北東アジアは20世紀後半の冷戦期に核兵器使用の危険性を含む武力紛争―50年代の朝鮮戦争、2度にわたる台湾海峡の紛争―が起こった地域です。ソ連崩壊後も世界で唯一冷戦構造が残っている地域でもあります。わが国の植民地支配と戦後の冷戦構造に起因するアジアの分断と対立は、それ自身が北東アジアの政治構造に深く組み込まれ、ソ連崩壊後も独自の分断と対立が続いているわけです。朝鮮半島と台湾をめぐる問題でありますし、日・米と中国・北朝鮮との関係であります。朝鮮半島問題と台湾問題は取り扱いに失敗しますと大規模な地域紛争に発展する危険性を秘めています。最悪には核兵器を含む大量破壊兵器が使用される懸念すらある地域です。北東アジアは世界で最も核戦争の危険性が高い地域と言ってもよいでしょう。
 北東アジアは米・中・ロの核兵器国が国益を絡ませながら非核保有国の韓国とわが国は米国の核の傘の下に入り、米・中・ロ・韓国・北朝鮮・わが国がそれぞれ軍事同盟を中心にした2国関係を背景にしパワーポリティクスを展開しています。ここにはASEAN地域フォーラムのような緩やかな安全保障対話すら存在していません。
 このような北東アジアの安全保障環境の中で最大の経済大国でありアジア最強の海軍・空軍を有するわが国が北東アジアの平和維持の鍵を握っていると私は考えています。朝鮮半島の和解と平和統一と台湾問題の平和的解決は、わが国の安全にとって極めて重要です。朝鮮半島は和解と平和統一に向かって進展しつつあります。しかし、台湾問題は未だ解決の見通しがありません。米国の中国政策は、台湾問題をめぐり関与政策と封じ込め政策の間を揺れ動き、北東アジアの安全保障環境に不安定さを増しています。台湾が独立宣言することになれば、アメリカは台湾関係法を利用して必ず武力介入するでしょう。わが国は周辺事態法によってアメリカに対して軍事的な支援をすることは明らかです。そうすれば中国をわが国を敵国とみなして、最悪の場合、核ミサイルによる攻撃すら予想しなければなりません。このような事態はわが国にとってまさに悪夢としか言い様のない事態です。

 ところで、共通の安全保障という概念があります。1982年パルメ委員会の報告書で詳細な概念が紹介されています。他国の犠牲において自国の国益や安全を図るというのではなく、全ての国は安全への正当な権利があることを認めること、軍事力は国家間の紛争を解決するための正当な道具ではないこと、安全保障は軍事的優位によっては達成されないこと、共通の安全保障のためには軍備削減と質的制限が必要であるなどの原理です。更に安全保障と協力に関する地域会議、平和地帯、非核地帯など、いわゆる地域的アプローチを国連の活動を補い補強するものとして提唱しています。

 北東アジアに対する日米の安全保障戦略は、日米安保体制による政治的・軍事的な力でそれぞれの国益を図ることで、その戦略の中心は米軍の前方展開と核戦力およびわが国の軍事力です。戦略の狙いは中国を抑止しながら米国を頂点とした国際秩序へ中国を取り込むことです。
 北東アジアにはこれに代わる安全保障政策が必要ですし、私は可能であると思います。日本・米国・中国・ロシア・韓国・北朝鮮の6ヶ国による地域的集団安全保障機構です。それが可能な条件とはどういうものでしょうか。
この6ヶ国は歴史的、地政学的に密接な関係を持ってきました。とりわけ、朝鮮半島をめぐる20世紀の歴史を見ればお分かりだと思います。それぞれの国の安全保障政策が互いの安全保障政策を規定していることもあります。朝鮮半島の和解と平和統一をめぐる動きはその典型を示しています。中国との関係でも日本と米国が台湾の領土の帰属は未解決であるという立場に固執する限り台湾独立論が燻って北東アジアは不安定になります。中国と米国とが互いに核兵器先制不使用を約束しなければなりません。わが国も日米同盟が台湾を対象にしないと中国に保障しなければなりません。わが国はロシア、中国、韓国と領土問題を抱えております。この問題は歴史的経過もありますが、一つにはわが国に対する不信感、脅威論も背景になって、困難な問題になっています。朝鮮半島の和解と統一に向けて既にわが国を除く中国、ロシア、米国は重要な役割を果たしつつあります。わが国が加われば朝鮮半島問題を6ヶ国が協議し解決できる地域間対話が成立するのです。6ヶ国協議が将来の地域的集団安全保障機構に発展することになるでしょう。
北東アジアの非核地帯構想もこの6ヶ国協議の中からつくることも可能かもしれません。この機構の中に非核地帯委員会を作り、そこが非核地帯の検証、査察を行うということもできるでしょう。
 米国、カナダ、ロシア全域、つまりバンクーヴァーからウラジオストックまでをカバーするヨーロッパ安全保障協力機構OSCEが95年1月にできました。北東アジアではこのような地域機構の実現の可能性はあるでしょうか。朝鮮半島の和解、平和統一プロセスとわが国の反核運動による核廃絶と非核地帯創設運動にその可能性が見いだせるのではないかと思っています。
この二つのプロセスが互いに深い関係があることに留意すべきです。
 朝鮮半島の和解プロセスに向けた重要な柱は、94年の米朝枠組み合意で、北朝鮮の非核化とその見返りである朝鮮半島エネルギー開発機構KEDOによる軽水炉の建設、米国の北朝鮮に対する消極的安全保障を宣言しています。この枠組み合意により、北朝鮮は軽水炉の重要部品が提供される以前に国際原水力機関IAEAとの保障措置協定、検証措置に関する協定を完全に履行するとなっています。南北間の自主的な和解、平和統一の取り組みと合わせて、これらのプロセスは朝鮮半島の和解、統一を促進するはずです。
 しかし、このプロセスにはわが国が深く関わっていることを見落としてはなりません。北朝鮮との国交回復は極めて重要な促進要因になるはずです。また日本はKEDOに対するの主要な出資国の一つです。将来の朝鮮半島の非核化はわが国の非核化を当然に必要としているはずです。
 96年10月の韓国の中央日報による韓国の世論調査結果によると、朝鮮半島の統一後も核武装することに、82.8%の韓国国民が賛成しています。理由の一つは、わが国が核兵器敷居国、言い換えれば政治的な意思決定さえあればいつでも核兵器の開発と保有ができる国であり、日本核武装への脅威が存在することは明らかです。
 わが国の徹底した非核化は不可欠で、そのための非核三原則法案が提案されています。この政策はわが国の安全保障政策の根幹にある核の傘に依存するという政策と矛盾します。しかし、核の傘依存政策を現時点では日本人の多数が支持しています。国民の多数の支持で核の傘依存政策を転換しようとすれば、「米国の核抑止力に依存しなくても中国、ロシアから核攻撃を受けない」という確実な保障が必要になります。法的拘束力のある消極的な安全保障であります。
韓国も中国、ロシアに同様の保障を要求するでしょう。これは梅林さんが主張されておられる北東アジア非核地帯構想「スリー・プラス・スリー」と一致するものです。
 北東アジアの地域紛争の発火点である台湾海峡は、通常兵器による紛争が核兵器の応酬に発展する可能性が高い地域です。北東アジア非核地帯が実現したとしても、米・中間での核兵器使用を含む武力紛争が発生すれば、その影響を日本はまともに受けます。さらに、この地域は米国を中心とした2国間軍事同盟があり、紛争の成り行きによっては、北東アジアの非核地帯に限らず核攻撃を受ける恐れは残るでしょう。すなわち、地域内であらゆるで紛争を平和的に解決できる仕組みが必要なのです。

 北東アジア非核地帯構想と日本国憲法の関係で、困難な問題がでてくると思います。国連憲章52条はいわゆる地域機関を予定しています。しかし、その地域機関の強制行動、武力行使による紛争解決権限は安保理の権威のもとに置いています。リマ条約は前文で憲章52条を引用し、加盟国間の紛争の平和的解決義務と解決のための手続きを規定しています。しかし、他方で、憲章51条による域外からの加盟国に対する武力行使に対して集団的自衛権の規定もおいているのです。北東アジア地域的安全保障機構はおそらく憲章52条に根拠を有する地域機構になるはずです。しかし、リマ条約と同様に、外部からの脅威に対する集団的自衛のための機構を持つかもしれません。その場合、わが国はどのような立場で参加をすべきなのか。更に根本に立ち戻って見れば、国連憲章の安保理による強制行動、これは武力行使を予定しているわけですが、これすらわが国の憲法9条に違反するわけです。
 この地域機構に参加する場合、わが国がどの様な立場を取るのか。一つのテストケースとして、私はコスタリカの実践例を深く研究する必要があると思います。コスタリカはリマ条約に加盟し、他方、半世紀前に軍隊を廃棄した国で今日でもその政策は変わっていません。わが国は国連加盟するとき、申請書の中で、「日本政府はその有するあらゆる手段によって国連憲章から生まれる義務を遵守する」と述べ、国連の集団安全保障措置の内、軍事行動に関わる義務を負担しないことを留保しています。これと同じ手だてが北東アジア地域機構を設立する際にわが国が参加するパターンとして考えられるでしょう。

 この地域機構を設立する上で、NGOはどの様な取り組みが可能でしょうか。北東アジア地域的安全保障は国家間の関係でもあり、他方で、各国人民の相互関係でもあります。地域機構を創設し真に有効に機能させるには北東アジアを構成する各国人民の間の相互の信頼関係の創造が不可欠です。
35年前に国交回復した日韓関係は、国家レベルでは確かにパートナーになったかも知れません。しかし、両国人民の間には長年にわたり今日まで真の友好関係は築かれていません。教科書問題、靖国問題が起きれば直ちにそれが表面化します。北東アジアの分断と対立を乗り越えて、地域的安全保障機構を実現しようとすれば地域内の人民間の信頼関係が決定的に重要だと思います。
 そのために我々は具体的に何をすべきか、いくつか述べたいと思います。北東アジアの共通の安全保障として、

・ 北東アジア非核地帯を実現させること、
・ 朝鮮半島の和解、統一プロセスを促進させるためにも、歴史問題の解決を前提にしたわが国と北朝鮮との国交回復を図ること、
・ TMD、NMDに反対していくこと、
・ 非核三原則の法制化など日本の徹底した非核化と核の傘の依存政策を放棄する、
・ それに伴う日米同盟と新ガイドラインの見直し、台湾未決論に立った台湾支持政策を改める
こと、

 これらの課題に北東アジアの諸国民と共同で取り組む中で、共通の安全保障を具体化する地
域的な安全保障が形作られていくでしょう。


●報告3  南アジアの情況●

ゴパル・シュワコティ・チンタン 弁護士


 私に、お話をするというより学ぶ機会を与えてくださり、感謝いたします。はじめてこちらに伺い、パキスタンとインドの弁護士が誰も来ていないのでビックリいたしました。
 地域の中で私たちが考えていることは力強い動員をすること。リーダーシップとヴィジョンを持ち弁護士、活動家、環境問題、人権問題に関わる様々な分野の方々に声をかけること。ウィラマントリーさんが加わってくだされば、素晴らしいヴィジョン、リーダーシップになると思います。

はじめに、インドのグループが8月9日の長崎の原爆記念日に出版する本「Out of the Nuclear Shadow」をご紹介します。コタリとジア・ミアンが書いた540頁の本で、第一節は、様々な良心、話し合い、政治的分析が網羅され、印・パの反核運動へと繋がっています。98年5月の核実験の前とその間に書かれたものもありますが、南アジアの核武装に反対しようということで書かれています。

 核兵器は権力の道具であり、惨めな現代において美化されたものであると言われています。ネパールは、インド、中国、パキスタン、ヒンズー教、仏教、イスラム教の国からの核の脅威にさらされています。この地域には、素晴らしい文化や文明がありガンジーを含む素晴らしい哲学者もいるのに、核のイデオロギーしかないという悲しい状況があります。
 印・パ間では、4年経っても、核不拡散について話し合う動きはあまりありません。アグラで印・パのトップが会いましたが、核問題は協議事項に入っていませんでした。
地域のフォーラムとしてあるのは、唯一、南アジア地域協力(サーク)ですが、3年以上話し合いをしていません。来年ネパールでの開催が予想されていますが、南アジア地域協力は2ヶ国間の問題は取り上げず、核問題は2国間の問題ということで扱われないことになっています。核軍拡という情況にありながら、話し合う場がないという非常に深刻な状況です。

 私たちネパールの学者、弁護士、活動家の間では、最近まで、アジア南部の核武装ということは議論にもなりませんでした。印・パの問題であると考える傾向にあり、他の国には犠牲者もいるらしいという程度でした。
印・パの活動家の大きな話し合いの場があり、ネパールの特にインテリや活動家たちはなぜ話し合いをしないのかという問題が出て、ネパールでも初めて議論が行われるようになりまし
た。

 私は大学で国際法を教えていますが、いくつか問題を抱えています。どの様にして国際法を定義したらいいのか。どうも誤解をし、解釈を間違えているという点があると思います。国際法の基本的文書には、私が生徒に提供しているのは国連憲章ですが、どの国も他の国に武力行使や威嚇をしてはならないと書かれています。唯一、限定的な時間を限って、自衛のために、しかも国連安保理の承認を得てしかできないという形で書かれていると思います。ICJの勧告的意見も完全には核兵器が違法であると言い切るには至りませんでした、人道法というものがあるにもかかわらず。それに反しているということですが、完全にということではありませんでした。
こうした議論から地域においてスタートさせなければならないと思います。多くのグループや人々がICJの勧告的意見などを含めた話し合いを行う機会がなかったと思います。ですから、地域の人々に情報を与え、教育して、核兵器に反対していくことが必要です。

 私たちは冷戦は終わっていなかった、ついに南アジアにやってきたと考えています。この地域で私たちが目の前にしているのは核の同盟です。インドをアメリカが、中国がパキスタンを支えています。印・パはどの様な壊滅的な状況にも進んでいこうとしています。誇りに傷が付くのであればやるぞという構えでいます。
 南アジアの核武装を考えるとき、グローバル化という観点からも見なければなりません。経済、貿易、小火器、核兵器のグローバル化です。核拡散だけではなく兵器の拡散については経済のグローバル化にも責任があると思います。こういう問題で技術的な論議だけに終始したら、勿論キャンペーンとか闘争したりとかできますけれども、それだけでは不十分、主要な問題には対抗できないと思います。

 私たちのこの地域の中での活動ですが、核問題に取り組む専門家はいませんが、人権、環境保護、科学者、医療専門家、様々な民族のグループが一緒になって、国内、南アジア地域で同盟を組み、いろいろな機会に政府に圧力を掛けています。そうした中で、核化という問題と民主化を二つの問題を結びつけて、なんとか強い運動を展開しようとしています。

 いま地域内の各国政府にどの様なリーダーシップがあるかというと、大変懸念されるべきだと思います。南アジアの全ての国にはなんらかの紛争があります。国内紛争、2国間紛争もあります。私たちにはそれらを討議する場もありません。ですから、イスラムの原理主義が現在非常に台頭しています。地域的な場でこうした問題を討議できないということから、外からの強い支援が、NGOのみならず核保有国からない限り、核兵器の不拡散は南アジアにおいて達成できないと思います。むしろ、他のどの地域よりも悪い時代になると思います。
ですから、特にアメリカ、日本が非常に重要な役割を果たさなければいけないと思います。米・日・印・パを一つの場に来させるということです。但し、もう一つ私たちの耳に聞こえてくるのは、「印・パに圧力を掛けることはできない、他の国々が核兵器を持っているのに止めろということはできない」という声です。

核兵器は国益、安全保障という名のもとに開発されていますが、長期的には経済的利害が絡んでいます。ですから、グローバルなキャンペーン、グローバルな条約づくり、国連を強化するための様々な措置を取り、国際法を尊重できるような体制をつくるしかないと思います。そうしない限り、印・パもこれらのことについて話す用意はないと思います。
強力なキャンペーンを地域内、国際レベルで行うためには、国連を強化し、国連憲章によらなければならないと思います。残念ながら、現在、国連は核保有国によってかなりそがれてしまっている部分が多いと思いますが、世銀、WTOなど様々な機関がありますし、全てが全て国連というわけではありません。
 南アジアで強力な運動を展開するにも、それに集中している人は少なく、外から圧力を掛けてもらうことやサポートも必要です。

次の南アジア地域協力首脳会談はカトマンズで開催される予定です。その前か同時期に、私たちもカトマンズで国際会議を開催しよう、その場で首脳や日本やヨーロッパなど他の地域の人たちに私たちの経験を語り、ICJなど様々な機関にもアピールしようと思っています。反核運動と現在ある経済危機、失業、貧困、民主主義の問題、人権侵害などと結びつけることができれば、草の根レベルで対応できると思います。
でも、それだけでは充分ではありません。出来る限りあらゆる場を使って、選挙でも選挙公約の一つに取り上げてもらえるようにするなど、利用できる機会を利用していきたい。印・パ・米・中などにもアピールしていきたいし、ネットワークを広げてこの運動を強化していきたいと思っています。

 
●報告4  戦争防止地球行動●

ソウル・メンドロヴィッツ 教授

 「戦争防止地球行動」は、個人の集まり、草の根活動体、市民社会の組織、国際的な組織であり、今後は一部政府にも関わってもらえると期待しています。私は今回参加者を募りたいということを目的の一つにして来ており、代表として話しをさせていただきます。
 3人の方々は私が知りたいと思っていたトピックをお話され、いろいろなことが始まっているということが分かりました。ブッシュ大統領がどうも平和活動を表に出すようなことをしてくれたのだと感謝したいと思います。
 92年に、武器登録というものが国連で採択される以前、核政策委員会が小火器登録制度にかかわり、ある条約をまとめました。これは自発的な登録制度から強制的な登録制度へ移行させようというもので、8頁にまとめて回覧し、いろいろな方々に見てもらいました。政府からはあまり反応は得られませんでしたが、市民社会の団体、NGOからの反応はありました。そして兵器取引なども問題にしていかなければならないと感じるに至りました。
ランディー・フォースバーグ(Nuclear Freeze Flame)、ジョナサン・ディーン(Union of Concerned Scientists)と私の3人は、知らずに憲法9条に関わるような問題に取り組むことになりました。「私たちには何か方法があるはずだ、現在の一方的な意思決定から、どんな社会であっても国境を越えて侵略的な行為を行うことが可能ではない、そしてそういう意志も持たないという枠組みに持っていかなければならない」と3人で知恵を合わせることになり、1年半くらいかけて文書にまとめました。それが戦争防止地球行動です。
 私たちはまず、軍事主義こそが敵であるという観点からスタートし、結論として核兵器そのものの廃絶は難しいだろう、まず戦争をなくさなければ無理だろうと考えるに至りました。85年にジョージ・キャノンが「西側諸国が生存していくには、戦争で違いを越えようとする先進国のやり方そのものを変えていかなければならない。同時に、今維持されている軍事的体制を解体していかなければならない。それによって戦争が起こる可能性を消していかなければならない」と書いています。
戦争防止地球行動の文書は、250人の個人と話し合い、35から40程の会議を欧米で持ち、今現在15回目の改訂を行い、22頁になっています。プログラムを作って、今後30−40年掛けてその通りにやれば戦争を違法にするだけでなく、完全に廃絶してしまうことができるだろうと思います。

 45年の8月9日以来、4500万人もの人々が直接戦争によって亡くなり、2億人が負傷しています。通常兵器によりこれほどの人々が亡くなったのです。2000万、あるいは2500万人が生物・化学兵器の使用によって亡くなっています。誰も核廃絶を諦めたわけではないが、同時に軍事主義にも対抗していかなければなりません。
現在のところ、世界中で39の地域紛争が起こっています。中東、コンゴ、印・パを除いた数字です。内戦ではジェノサイド的な傾向が必ず見られます。小火器、軽火器が使用され、ルワンダでは80万人も亡くなりました。
プラウシェアその他のNGOがこれらをモニターしてきました。構造自体を見てください。
核兵器に関する条約や協定の数だけでも、ホットライン協定、NPT、CTBTなど25もあります。ところが通常兵器に関しては条約が5つしかない。ヨーロッパ通常戦略条約、ラテンアメリカの通常兵器の輸送に関する条約などです。行動の指針と呼ばれる規範もありますが、指針に過ぎず、通常兵器に関する法的規範が非常に欠如しているということになります。

-戦争防止地球行動の4つの段階-

ペーパーを出していますのでご覧下さい。

第1段階・・・国連及び地域的な安全保障機構を大幅に強化再編し、紛争予防と解決、平和維持、ジェノサイドに対抗する行動を取るための能力を付与することにより、内戦防止に焦点を当てる。人権を擁護し民族的・宗教的・文化的少数者を保護する条約を含む法の支配を遂行する諸機関を強化する。軍事力、軍事費、兵器の保有・製造・取引に関する完全な情報公開に取り組み、これらの削減に関する対話を開始し、削減交渉が早期決着しない限りこれらの増強を10年間行わないこと。
これは難しい問題で、国家主権をどう考えるか、派遣をどう考えるか。平和主義者の中にも国際機関が武装することは良くないと考える人がいますし、主権に関する問題にも平和主義者の議論にも答えていかなくてはなりません。我々はヴィジョン15を持っていて、今ヴィジョン16に変更する際にこれらの人々の意見にも耳を傾けていきたいと思っています。
軍備、軍事費、兵器製造などの削減交渉も始めたい。そのために5年くらいの期間が必要です。兵器に関する透明性が必要なだけでなく、今後10年間少なくとも軍備を増やさない、量的にも質的にも凍結することをめざし、2005年までに合意したい。これは地球全体に関するプロジェクトですから、地球全体の人々がモニターする必要があり、そのためにNGOの参加を呼びかけています。
次に、15項目のリストから、この5年間で特に力をいれたいものについてお話しします。地域的な安全保障機構を特にアジアで作ることが必要です。これらの機構は国連事務総長と協力関係にあり、安保理を補完する位置にあります。これにより国連の早期警報システムに対する貢献にもなります。さらに国連の中で仲介的な機能を作ります。国連の文民からなる恒常的な警察部隊も作ります。

第2段階・・・世界規模での大幅な軍事力、軍事費、武器製造・取引の削減により戦争の危機をさらに減少させる。同時に国連と地域機構の紛争解決と平和維持の能力および国際裁判所を強化する。その他ですが、時間がないので飛ばします。

第3段階・・・改革された国連またはその地域機構の賛助なしに自国の軍隊を国境外には展開しない参加国(大国を含む)の関与により、国際社会の戦争防止能力を強化する。現行の国連憲章に基づく関与を更に明確にしたこの関与は、参加国が頼みの綱としてかなり大きな国軍を保持している間、地球的および地域的機構をテストすることになるでしょう。

第4段階・・・改革された国連および地域安全保障機構に戦争とジェノサイドを防止または終結させる軍事介入の能力および権限を恒久的に委譲すること。国連および地域機構の裁量に委ねる全ボランティア武装部隊の拡大。国軍の規模を今日の三分の一ほどに縮小する。

 日本国憲法9条との関係で重要な部分をお話しします。こうした段階を経て、各国が侵略行為を行う能力がないくらい軍事力を落とします。そして国連と共に地域安全保障機構が安全保障を担うようになり、ICC(国際刑事裁判所)が存在するようになり、戦争防止地球行動のプログラムは総会に提出されます。また、安保理での投票方法に関しても変えるよう要求していきます。これが非常に野心的でユートピア的だと言われていることは分かっていますが、各分野のNGO団体に賛同していただきたいと思います。
また、我々は、ローマICC規定を批准させることを支持しており、この二つのことのために執行委員会を作りました。ウィラマントリー判事も執行委員会の最初の会合に来てくださいました。約30名の著名な方々、様々な分野の40団体が入っています。
日本でも戦争防止地球行動の執行委員会をつくっていただきたい。世界のGNPの40%が日米にあるので、資金的なことを考えても、日本は重要です。詳細は、お配りした資料とホームページをご覧下さい。
http://www.globalactionpw.org


●意見・質問など●

コメント: 岡本三夫


 サマリーはせずに、印象的なものをコメントしたい。梅林さんがオーバーヘッドプロジォクターを使いながら説明してくださったので、地球にだんだん非核地帯が広がる様子がヴィジュアルに分かり、結局非核地球になるのではないかという希望を与えられました。井上さんのお話では、共通の安全保障のことが強く印象に残りました。これはオラフ・パルメ委員会のタイトルでもあるのですが、相手の安全性が確保されなければ自分たちの国の安全性も確保できないということですね。

 ゴパルさんのお話では、東アジアの核拡散の脅威を改めて強く感じました。これがやがて北上してきて北東アジアの核拡散に繋がる可能性がある。実際、アメリカの政治学者の中には核兵器が更に広がる可能性を予告し本を書いた人がいます。ケネス・ウォルツとセーガンは、どちらも核抑止論を信じているのですが、ウォルツは「ザ・モアー・ザ・ベター」で、核兵器国が徐々に増え18ヶ国ぐらいの核兵器国があった方が世界は安定するだろうと。日本とドイツもその中に含まれている。セーガンは、核兵器が5ヶ国のみに限られているのが世界平和にとって重要だと。

メンドロヴィッツさんは、ブッシュの鷹派的な新しい政策で平和運動がもう一度盛んになるだろうと言われましたが、レーガンがソ連を悪の帝国と呼び限定核戦争の可能性を示唆して、世界中が反発し、ニューヨークの集会には100万人(1982年6月12日)、ロンドン、パリ、ローマなど世界各地でも数十万規模の人々が集まりました。いま、アメリカの一国主義がこれ以上進んでいくと、新しい平和運動を持って世界のNGOは反撃を加えるだろうと感じました。
3週間ほど前にアウシュヴィッツに行ってきました。広島の原爆投下をホロコーストと言う人がいますが、私は現場主義でアウシュヴィッツとかマイダネックとかに行くことによって非人間性を学ぶのです。海外代表の中には今回初めて広島に来られた方もおられると思いますが、広島の地にあって核の問題を考えることが非常に大事なのではないかと思います。かつてゴルバチョフが広島でサミットをやろうとレーガンに呼び掛け、一笑に付されて実現しませんでしたが。私は、広島やアウシュヴィッツは、二度と戦争を起こさないと決意するために、我々にいろいろなことを現場で示唆してくれるのではないかと感じました。


コメント: ジョン・バローズ

 コスタリカの人権弁護士カルロス・ヴァルガスさんから、皆さんに今回来られなかったお詫びとご挨拶を言付かってきました。
 イギリスの弁護士のフィル・シャイナーさんは、IALANAのメンバーに家族で加わってくださいました。
 さて、私は東アジアの専門家ではありませんが、プレゼンテーションについてコメントさせていただきます。北東アジア非核地帯構想についてのプレゼンテーションですが、私はTMDについて考えさせられること大でした。TMDの構想はこの地域のみならず、グローバルな軍拡競争に繋がりかねません。現在日米が研究しているTMDとアメリカの国土を守るミサイル防衛とは緊密に結びついています。ブッシュ政権は受けつけないと思いますが、短期的に考えられることは、北朝鮮と取り決めをして北朝鮮に長距離ミサイルの生産と輸出を止めさせなければなりません。これこそ一つ具体的な方法として可能ではないかと思います。核兵器の安全保障の機構において実現可能だと思います。
パネリストの方、TMD、地域安全保障、非核地帯構想の関係について話していただければと思います。
 ご存じのようにアメリカはグローバルな軍事的優位性を維持し拡大しようとしています。これはブッシュ政権だけの方針ではなく超党派の50年間続いてきた政策であり、今日でもそうです。
では他の国の反応はどうでしょう。今、世界に興味深いトレンドが見られます。多くの国々はいまアメリカ抜きであっても地域およびグローバルな取り決めを作ろうとしています。ICC国際刑事裁判所、京都議定書も最たる例ではないでしょうか。場合によっては、北東アジアの安全保障の取り決めないしは非核地帯構想も、各国がもうこの辺でアメリカ抜きで自らの安全保障を生み出そうという方向に移ることができるのではないでしょうか。


Q1 核兵器廃絶と戦争防止地球行動
ジャッキー・カバッソウ 
 メンドロヴィッツ先生、核兵器廃絶と戦争防止地球行動がどのように結びついているのかもう少し詳しくお話しください。

A1 メンドロヴィッツ
 2000−2005年までの優先課題のA項目に核軍備削減交渉の開始がありますが、これを実現していきたい。そのころには500位の核兵器が双方にあり、残り5年で無くなるというのが私たちの目標です。現在このモデル行動を見直しこれでうまくいくのかどうか検討中です。
 私たちはある意味ですべての人がこれに参加すべきだと思いますが、最終的には皆が参考にできる文書が必要です。例えば核軍縮に焦点を当てている人たちに対しては、声明文を出してウェッブサイトに掲載し、彼らのやり方についてフィードバックを得られればかなりの助けになると思いますので、ご意見をお寄せ下さい。


Q2 東北アジア非核地帯:核兵器の移動
アラン・ウェア 

 東北アジアの非核地帯の核兵器の移動について、梅林先生に質問です。ご提案では、移動をなくすということだったと思いますが、他の地域では、移動はまだ禁止されていません。アフリカ地域では禁止されていず、ラテンアメリカでは含まれていますが守られていないという状況にあると思います。東南アジアの非核地帯では含まれていますが、核保有国は議定書に調印していません。こうしたものは非核地帯条約において、攻撃さえされなければということで行われたと思いますが、核兵器のない非核地帯においてということではあまり言われていないと思います。つい最近、イギリスから核兵器を南太平洋の事態に中国に対して使うという話しもでていました。
 ですから消極的な安全保障について、ニュージーランドでやろうとしているのは、国において核兵器の移動を禁止するということです。ご意見をお聞かせください。

A2 梅林 
 トランジットとポートコールの問題は、他の非核地帯では禁止事項に含まれていませんが、先ほど、東北アジアでは禁止事項に含めざるを得ないような歴史的経緯があるということを申し上げました。日本政府はこれまで、トランジットにしろポートコールにしろ核兵器を搭載しているものは拒否すると、日本の市民に約束してきているわけです。
これまでの非核地帯条約と同じようにそういう禁止事項を持たないような非核地帯条約をつくるというアプローチも可能ですが、日本の市民にとっては現状よりも政策が後退するということを意味します。ですから、東北アジア非核地帯には含めざるを得ない項目になるだろう。逆にそのことがあるために、日本政府は非核地帯の提案をしたがらない。いままで日本の市民に対して、アメリカの核搭載艦を拒否すると言ってきたけれども、実は密約があって国民に嘘をつき続けてきたということであれば、そのことによって、新しい非核地帯条約を提案できないということになっていくかも知れません。そこは、日本の市民としては、クリアーにしていかなければならないチャンスになる。東北アジアでそのことがクリアーできるような議論が前進するとすれば、他の非核地帯条約に拡大していく最初の例になるだろうと、私は思っています。しかし、その時にアメリカの「否定も肯定もしない」という政策に変更が迫られるということになっていくと思いますので、アメリカの政策に対するチャレンジでもあると思います。


Q3 戦争防止地球行動とIALANAの戦略
浦田賢治

 メンドロヴィッツさんに、戦争防止地球行動(GAP)とIALANAの戦略、戦術的な、あるいはアジェンダに関する質問です。昨年NPT再検討会議に向けてNGO、特にアボリション2000が活動したとき、ホームページで一つの論争がありました。例えばエドワード・テリーさんとアラン・ウェアさんの論争です。テリーさんはアボリションではなく全面完全軍縮条約をつくる要求を出せと、アラン・ウェアさんはNPT再検討会議をやっているのだから全面完全軍縮条約をつくれという要求を出すことは政治的に間違っていると反論しました。私はアラン・ウェアさんの立場を支持しますが、日本国憲法の不戦の立場に立つと、全面完全軍縮を追求することの正当性と合法性があるように思います。
 二つ目の質問ですが、日本でGAPへの参加を募る場合、日本国憲法の立場に立てばやりやすいと思います。しかし、日本で運営委員会を作るというと、なかなか難しく、もっと説明が必要だと思います。

メンドロヴィッツ
 第一に戦争防止地球行動が完全軍縮という方向に行かなければ日本で実行委員会を作ることができないという意味でしょうか。

浦田賢治
 IALANAは核廃絶を唯一の目的として1989年にストックホルムで設立されましたが、冷戦が終わった直後にIALANAでは、核廃絶の課題はもう達成されたとして全面完全軍縮を掲げる組織にしようという規約改正案が出されました。そこで、1990年だったと思いますが、オランダでの会議に参加した日本の代表団(代表:松井康浩)はIALANAの目的、名称の変更に反対しました。その結果、今日IALANAが存在し続けております。しかし、IALANAの活動の中でメンドロヴィッツさんはいつも全面完全軍縮も必要だと強調しておられる。我々の理解ではハーグ平和アピール(HAP)での日本国憲法9条の承認ということに結びついていると思います。
そこで、核廃絶という要求と全面完全軍縮との関係をどう捉えるか。HAPの「10の基本原則」で不戦の決議をするようにと言った第1原則と、核廃絶を進めようと言った第6項目の関係をどうするかというのが、私共の思想的な、あるいは戦略的な困難な問題であるという自覚を持っています。


A3 メンドロヴィッツ
 権威を持ってIALANAがどういう立場を取っているかという話しはピーターさんがすると思います。
核廃絶をしたいという方々はそれが主たる目的であると考えていると思いますが、GAPは、軍事主義の中で核化が行われるのだと考えています。ですから、より広い前後関係(context)があります。その意味で、戦争そのものを廃絶すべきだということで、あるプログラムを立てています。これを見ていただきますと、47ほどの違った法的、政治的な研究課題(project)があり、世界の非核化は大きな優先順位がついた研究課題です。私たちは対抗しようとか、かけ離れようとしているわけではありません。IALANAでは私たちのGAPも主なプログラムとして取り上げていただいています。二つの間に何ら対立はないと考えています。

A3 アラン・ウェア
浦田先生のおっしゃったエドワードと私の論争について、私は戦争防止地球行動の立場が問題になったのではないと思っています。エドワードはNPTの後に来るのは完全軍縮条約だと言い、私はそれは政治的に現実的ではないという立場です。しかし、そのことはGAPを攻撃するものではなく、GAPは達成可能だと思っています。核の問題と他の問題にはもちろんリンクがあります。核兵器問題が進まなければ戦争の話しも進まないということです。ニュージーランドでは核兵器は禁止されており、立法の形で国内で実現化することができます。その意味でGAPのプランと合致した方向で進んでいます。ですから、メンドロヴィッツ先生の言うように、核軍縮と完全軍縮との間に矛盾はないと私は思っています。

A3 ピーター・ワイス
 メンドロヴィッツに賛成する部分があります。つまり、IALANAの主要な目的である核兵器の禁止と廃絶をめざしていることと、完全軍縮に向けた動きの間に大きな緊張関係はないと思っています。我々としては、核の廃絶は完全な軍縮まであり得ないという立場は、核保有国が取りつつある立場ですから支持できません。このような立場はクリントン政権の間影を潜めていましたが、ブッシュ政権になって再び台頭してきました。我々はそのような立場とは違うとはっきり言わなければなりません。


Q4 非核化地帯傘下の諸国を結ぶには
ピーター・ワイス

 二つ質問があります。一つは井上先生と梅林先生への質問。現在非核化地域に含まれる国家は113ヶ国ということですが、これは非常に力強いものになる、新アジェンダ連合とも協力関係に立っていけると思います。
 メンドロヴィッツさんの戦争の廃絶を考えていかないと核廃絶は難しいのではないかという懸念は分かります。しかし、我々の目標として核廃絶にしっかり目を向けることが重要です。構想としては分かりやすいのですが、時間的な間隔spanを考えても難しいものですから。それに関して私にはプランがあります。軍事化とか戦争のシステムの話しをしなければいけないわけですが、それでも充分ではない部分があります。戦争の原
因の部分のところが練れていない。貧困をなくす正義が重要だということは分かりますが、GAPの支持者と反グローバリズムの運動の人たちとリンクの部分はどうやってつくっていくのか。戦争の原因について、もっと具体的なことを書き込むべき、言っていくべきだと思います。戦争のシステムと世界の軍事化と、貧困、不正義、グローバリゼーションの問題、フェミニズムが対処している問題、少数者の問題の関係をはっきりと具体的に。もしそうであればどうやってというのが質問です。

A4 梅林
 現在非核地帯に含まれる113ヶ国をコネクトする試みがあるかというご質問だと思うのですが。昨年の9月にスウェーデンのウプサラで非核地帯の会議があったが、ラテンアメリカ非核地帯条約機構の事務局長が、一昨年だったと思うのですが、同機構の決定として非核地帯傘下の全ての国が集まるようなコンファレンスをやろうと合意したのでサポートして欲しいと言っておられました。ですから、非核地帯傘下の国が一つのブロックを作ろうという動きは現に生まれてきており、非常に強力なものになると期待しています。
 南太平洋非核地帯をつくろうという提案がブラジルなどから出ています。南半球の非核地帯を全て結ぶような新たな非核地帯の構想の提案です。この場合も参加国が一つのブロックを作るという結果になり、大きな勢力を作ることになるのではないかと思います。

A4 アラン・ウェア 
 地域の非核化地帯に参加している国家に出させたい宣言案ということでは、ニュージーランドからの非核化地域に関する宣言案が起草中です。おそらくこの非核化に関する国際会議で公開することになると思います。宣言に含まれるのは、非核化地域が既に達成されたこと、これらの国家が将来何を望んでいるかということ。宣言に核兵器の使用と威嚇の違法性も盛り込まれるという噂があるのですが、まだ確認は取れていません。

A4 メンドロヴィッツ
 ピーター・ワイスさんの質問の戦争の根本的原因は非常に難しいテーマです。明確な答えはないわけです。犯罪の原因はと言うときと同じです。だからといって犯罪を放っておくわけにはいきません。警察、法廷があり、犯罪を出来る限り防止していきます。
では、非軍事化についてはどうでしょう。私は戦争が終わるまで待ちたいとは思わない。
現段階で戦争を防止できる方法を探したいのです。
 それから、他の運動に関わっている人をどうやって巻き込んでいくかというご質問ですが、まず、運営委員会には、フェミニストであり環境活動家のVandana Shira(インド、Research Foundation for Science, Technology and Natural Resource Policy)、Ricard Navarrow(エルサルバドル、Friend of Earth)、Felicity Hill(オーストラリア、平和と自由のための女性連合)などいろいろな運動に参加している人がいて、戦争システムをなくすことに彼らの利益を見いだしています。例えばフェミニズム、環境、少数者、先住民の権利、貧困などの運動を十分に理解する能力がなかったとしましょう。
そうした場合、これらの運動に携わる人から政策方針書をもらえればと思います。そうすることで、GAPとどういう関係を築いていけるか検討していきたい。現在、私たちにはそれをするだけのリゾースがありませんので、運動をしている人たち、中でも運営員会に参加している人たちにお願いしています。


Q5 東北アジア非核地帯ネットワークとアセアン地域フォーラム
君島東彦 

 梅林さんに質問ですが、第1に、東北アジアで非核地帯を作っていくための市民による東北アジア非核地帯ネットワークができたと聞いていますが、具体的にどういうもので、何を目的としているのか、活動予定など教えていただきたい。第2に、ASEAN地域フォーラムに対する評価と、NGOの側からどういう働きかけをするのが有効でしょうか。

A5 梅林
 東北アジアの非核地帯をつくる国際ネットワークは、今年の1月末にソウルで開催された国際会議でできました。今は、日本と韓国の市民団体が中心になりネットワークができているが、朝鮮民主主義人民共和国も含めて、更にその他の国の市民団体も含めたものに発展させていこうと話し合っています。作るときも作ってからもそうですが、丁寧にネットワークの活動をしていきたいと思っています。というのは、東北アジアの非核化に対する日本の国内と韓国の世論の状態が全く違うんですね。日本ではこの問題はそれなりに議論されてきましたし、既にいくつかの政党は支持を表明しており、政治的な基盤もできているが、韓国では問題そのものが全く新しい。朝鮮半島の核問題は、いままでは統一問題ということを中心に議論してきて、非核地帯という形での市民の理解はほとんど素地がない。なおかつ、日本の運動がイニシャティヴを取ることは、韓国の人たちにとっては決して望ましいことではないというようなこともあって、韓国でこの問題がどのように市民権を獲得していくかということには相当時間がかかる。それを待とうということです。何もしないのではなくて、日本も韓国も独自の展開をし、それが絶えず密接に情報交換されていくというような活動を当面重視していこうというのが、ネットワークで話し合ったことです。
 韓国では、1月のシンポジウムを韓国のオピニオンリーダーに知ってもらうために説得力のある本を出版することにとりかかっており、8月25日頃に完成すると最近聞きました。また、韓国ではTMD戦域ミサイル防衛に関して当面関心が高まっており、そのことを通して地域の安全保障の問題を議論していくのが道筋として見やすくなっている。
また、10月半ばにソウルで東北アジアの会議をやるので中国、日本、韓国、北の人たちなど国際的な活動家にも来ていただきたいと聞いています。非核地帯とミサイル防衛、とりわけ戦域ミサイル防衛、と二つパラレルにしたような会議です。私は、日本では国会議員をこの議論にどう噛ませるかが、次のステップとして非常に重要だと思っています。

 二つ目の質問のASEAN地域フォーラムですが、これは1日外務大臣が話し合うトーク・ショー的な場になってしまっています。信頼醸成の役割をしていることは否定できませんが、非常にスローで、内実を伴うためには時間がかかる。NGOとしてはASEAN地域フォーラムで各国政府に何を議論させるかということに力を入れるべきではないかと考えています。私たちは日本政府に対して、非核地帯の問題を出すよう要求していますし、今年に関していえば、日本政府や他の国の政府にサイル防衛の問題を議題にすべきだと働きかけるということをしています。1日の会議しかないが、実際は年間を通じてトラック2の議論がある。学者とかシンクタンクの人たちが集まってASEAN地域フォーラムでどういう議論をさせるかというフォローアップがなされているので、そういうところへのアプローチも、我々としても可能だと考えています。


Q6 基本的理念についての共通認識
池田真規

 基本的な理念の問題について、どういう共通の認識が得られるのだろうという問題です。東北アジアにおける平和の創造というテーマで、私には国際紛争を解決するのに武力に依存しないという憲法9条の上に立つヴィジョンがあります。東北アジアにおける戦争の原因は何か。日本は侵略したけれども、東北アジアの国々、中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国から侵略されたことは二千年来ありません。ですから、私は、東北アジアにおける平和の創造とは、東北アジアの国々と集団的安全保障をつくることであり、日本のヴィジョンであると認識しています。梅林さんが話された東北アジア非核地帯条約はこれに近づくためのワンステップだと思っています。
 アジアの平和の創造に最大の障害となっているのは米軍の存在です。米軍の存在はアジアに緊張をもたらし、中国、北朝鮮は米軍の存在に脅威を感じて軍備をしています。
米軍の脅威がなければ、中国や北朝鮮が日本に攻めてくるという脅威は全くありません。こういう基本的な認識について共有してもらえるんでしょうか。メンドロヴィッツさん、バローズさんはどうお考えでしょうか。

Q7 ディフィリポ
 梅林さんと井上さんに質問です。アメリカと日本の軍事協定はこの5年間更に強化されています。そして憲法9条に抵触しています。この同盟関係があるから、非核地帯をつくってもなにも起こらないでしょう。日本には非核三原則がありますが、基地がこれだけあるわけですから、日本に核兵器が入り込むということは充分にある。ですから、このような活動を行ったとしても、勿論それは賞賛されるべきことですが、現状を考えると効果があるのかどうかという問題がある。
 冷戦がなくなっても、冷戦構造が更に強化されたという問題があります。現在の深刻な問題は、日本の人口の大部分がこの同盟関係を支持している。と同時に、憲法9条を支持していることです。この矛盾に焦点を当てて行かなければ、いくら提案しても全く効果がないと思います。非核地帯があってもアメリカが核兵器を日本に持ち込むという状況があり、信頼することはできないのではないでしょうか。

意見: 有地淑羽
 アボリション・ジャパンで活動しています。2、3日前の朝日新聞が韓国の被爆者がアメリカ政府を訴える準備をしていると報道しているのを読み、韓国、日本、アメリカの弁護士が共同して支援していけたら素晴らしいなと思いました。政府同士は例えうまくいっていない面があっても、NGOはこんなに仲良く力を合わせて運動ができるのだということを見せつけていけば、空気も代わっていき、仲良くなれる部分もできてくるのではないかと思いました。

意見: ジャッキー・カバッソウ
 第1に、ゴパルさんに一言。私は昨年11月インドのデリーで全インドの核軍縮平和会議に参加しました。印象的だったのは、参加者が女性・貿易・保健・貧困問題を扱っている人など様々で、皆、印・パの核武装、この地域での負債などどういう関わりがあるのかよく理解していたことです。そういったことから非常に力強い運動が始まる要素があると思いました。それに反して西欧諸国では難しい、この問題が孤立化している面があります。
 第2に、核廃絶と核軍縮の話しです。核廃絶が先端になって、戦争そのものの廃絶プログラムに繋がると思います。また逆に、より通常兵器あるいはハイテク兵器へと走る可能性があると思います。著名な核廃絶運動家が「核戦争は、通常兵器による戦争へと取って代わられるようになった」と言っていました。劣化ウランを使った兵器はタングステンを使った兵器に代わっていっています。CTBTでは、アメリカで政治的な不一致がでています。一部のグループはCTBTを支持しながら研究所での実験は支持すると言うが、その実験がNMDの研究に使われています。NMDに反対しながら研究開発には賛成している人もいます。
ですから、例えばトライデント潜水艦の核兵器を取り除いて他のものと代えてはならないということです。単純なことですがこれをはっきりさせることによって、戦争の廃絶に繋がっていくと思います。そして、結果的に割を食うことにならないようにしなければならないと思います。


岡本三夫
 パネリストの方々に質問に答え、かつ最後の発言をお願いします。


メンドロヴィッツ
 GAPの活動は既にある情報をもとに人々に情報を与え教育し、あちらとこちらの活動を繋げようということです。私たちにはもっとイニシャティヴが必要です。もっと会合やキャンペーンをし、リーダーたちも連れてくる、被爆者を各地に連れていって伝えてもらう、リーダーやメディアを教育し、一般の人にも情報を広げることが必要です。

A7 梅林
 私は、ディフィリポさんの質問に答えることが、結びとして大事なことだと思います。 まず、日米安保体制をどうやって壊すかというところから、長い運動の歴史があるわけです。それで、日米安保体制に代わる新しい平和のメカニズムを創ろうというのが基本的な発想です。日米安保体制に反対するという運動が核兵器廃絶の運動と長い間イコールになっており、そのことによるデッドロックというものが長い間続いてきました。
ご指摘のように、「日米安保体制は受け入れ、核には反対する」と言う市民は多い。この世論に迎合するために、日本政府は核軍縮についてはリップ・サービスをし、いろいろな矛盾をつくりだしているわけです。世論の側から矛盾を明らかにし、日米安保体制そのものの持っている、例えば日本国憲法との矛盾、地域の平和をつくることとの矛盾に辿り着いていけるというのが、私たちの戦略なのです。
冷戦中は、ほぼ、日米安保体制即核安保体制と断言できたのですが、冷戦以後は、日米安保体制の中における核の比重はものすごく小さくなった。その変化の中で非核地帯を議論することは、違う間口を広げてくれることになった。例えば、トーマス・グラハムJr.などが、日本が非核化することを日本政府が政策提言をすれば、クリントン政権の中でも賛成と反対が半々だろうと強調している。つまり、日米安保体制と矛盾するからと自動的に拒否することではないと。ですから、私は核のところから日米安保体制を解いていくことを考えています。

A6、7 井上正信
 ディフィリポさんのおっしゃったことに同感です。私が今日、提案した内容は、日米の2国間軍事同盟に取って代わる安全保障政策を進めていこうということです。
私は、日本の反核運動は日米安保体制の問題をある意味で避けて通ってきたのではないかと思っています。確かに91年のブッシュ・イニシャティヴ以降、日米軍事同盟の中で核の問題の比重が少なくなったというのは事実かも知れません。常時核が持ち込まれていたということはなくなった。しかし、アメリカの核政策は、益々、先制核使用と非核兵器国に対する核使用の傾向を強め、核の役割を拡大し、日本の核兵器政策そのものがアメリカと同じ核抑止政策になってきています。すなわち核の役割を拡大してきています。危険な軍事同盟になってきているのではないかと思うわけです。
 池田先生の言われた憲法9条のスタンスを、私も打ち出したいと思っていますが、それで説得力はまだないと思います。
韓国が朝鮮半島の統一問題に見通しを付けながら、韓国の国防政策の中で海軍と空軍に重点を移し、例えばAWACSと新型潜水艦の導入を考えています。何を狙っているかというと、一つはやはり日本が将来の仮想敵国、「いずれビンの蓋である米軍は日本から撤退するだろう、その場合の最大の脅威は日本だ」という考えは韓国にもあるはずです。韓国の中には、南北が統一した際に、北朝鮮の強大な軍事力あるいは大量破壊兵器はあっても構わないという極端な議論すらあるくらいです。
ですから、我々の持っている軍事国家としての日本の現状をどう変えていくのかということを併せてやっていかなければダメです。そして、これを変えていくには日米軍事同盟の根幹に触れざるを得ないわけですね。この地域的な安全保障構想というのは、私たちだけではなくて、日本政府、アメリカ側も否定しないわけです。勿論それは2国間軍事同盟を背景にした形で、多国間安全保障対話を進めていこうということで、これは村山内閣時代の防衛問題懇談会の構想の中に出ています。ですから、私は日米軍事同盟を否定する、その中で国民に「それでも日本は安全なんだよ」という選択肢として、地域的な安全保障機構を提案しようと考えています。

意見:デヴィット・ライト
 「木を見て森を見ず」と言いますので、木から距離を置いて見たいと思います。報告者の方々が重要なことはおっしゃったと思います。私たちの大きな関心の一つは人々を動かしていくことだったと思います。この会議を終える前に考えていただきたいのは、人々を動かすための一つの文章が欠けているのではないか。政府に賛同させるための大きな文章は勿論国連憲章で、我々のほとんどの目標が含まれています。一般の人々も比較的国連憲章を支持していると思います。私たちがすべきことは、政府が既に批准し署名している国連憲章をもっと利用し遵守するように言っていくことだと思います。



●閉会にあたって●
岡本三夫
 戦後の日本はずっと日本国憲法体制と安保体制を創ってきたわけです。我々は日本国憲法体制を守ろうとして頑張ってきたが、アメリカは安保体制を強化することで憲法体制を少しずつ崩してきて、今のような状況になっています。
 国連憲章は核時代前の、日本国憲法は核時代の産物です。ですから、日本国憲法を是非読んで下さい。国連憲章よりずっと進んだ21世紀の憲法的な側面を持っています。先ほど「核廃絶か、全面的軍備の廃絶か」という議論になりましたが、日本国憲法はその両方を主張していると私は考えています。そこで、私は、「第9条の会・ヒロシマ」という運動をやってきました。第9条というところで全面軍縮と戦争撤廃を、ヒロシマというところで核兵器の廃絶を訴える運動をしてきました。8月6日に中国新聞の1頁に憲法9条を守ろうという1千数百人の名前入りの意見広告が出ますので、お持ち帰りください。部分的には英語になっています。
 今日は、アジア地域において平和の創造をどのように展開していくのか、非核地帯、地域的安全保障ということを法律家と市民が一緒にどのように創っていくかということについて、いろいろと話し合いました。メンドロヴィッツさんが地球憲法第9条体制とおっしゃいましたが、そういう体制を創っていくきっかけになったであろうことを希望して、今日の集会の締めとしたいと思います。
暑い中、皆さんありがとうございました。また、ここより暑いブースの中で働いてくださった通訳の方々、ありがとうございました。