************資 料:日本ハーグ平和アピール運動から************

     

●週刊文春と日刊ゲンダイの記事の件について●

「週刊文春」7月5日号と「日刊ゲンダイ」7月2日版にて1999年にオランダのハーグで開催されたハーグ平和市民会議において発表された「公正な世界秩序のための10の基本原則」について強い批判を受けました。
批判のポイントは、「ハーグ平和アピールに日本から参加した人々が、帰国後、会議で日本国憲法第九条の価値が確認されたと騒ぎ立てていたが、公式文書に第九条は載っていないではないか」というものでした。これを受け、日本ハーグ平和アピール運動としても例会などでこの批判記事に対する対応を度々討議してきました。
この批判記事に対する応答として、「世界」2001年11月号に「日本国憲法第九条とハーグ平和アピール」という君島東彦・北海学園大学助教授による記事が掲載されましたことを報告いたします。
「世界」2001年11月号 http://www.iwanami.co.jp/sekai/2001/11/directory.html


日本ハーグ平和アピール運動としてのこの件についての見解を述べます。
日本の憲法9条は会議の最終日に発表された「公正な世界秩序のための10の基本原則」(「10の基本原則」)の第一項目に「@各国議会は、日本国憲法第九条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである。」と取り入れられましたが、50項目からなる「21世紀の平和と正義のためのハーグ・アジェンダ」(「ハーグ・アジェンダ」)には言及されていません。
われわれハーグ会議の参加者は最終日に発表された「10の基本原則」で日本の憲法9条が取り入れられたことで大きな成果であると感じましたが、批判記事は「ハーグ・アジェンダ」は「公式の採択文書」だが、「10の基本原則」は「公式の採択文書ではない」としており、ここが批判のポイントになっていました。
「ハーグ・アジェンダ」は会議の以前に本部事務局で作成した草案を世界のNGO関係者へ送信し、意見を求めてまとめられ、会議初日に参加者へ配布され、会議後に国連へ提出され国連文書となったものです。世界各地のNGOの課題を含むため、「ハーグ・アジェンダ」には相互の矛盾や緊張関係はありますが、世界の平和NGOの活動を包括的に捉え、それらを有機的に関連づけた点に大きな特徴と意義がると考えられます。
一方、「10の基本原則」は、4日間にわたる討議の帰趨を要約した覚書で、実際の討議の結果を反映しているのです。会議の最終日に機関紙で発表されまたプレスリリースもなされました。この「10の基本原則」も会議後には、会議中に作成された他の多くの文書とともに国連へ提出されています。
会議前に作成された「ハーグ・アジェンダ」と会議最終日に作成された「10の基本原則」は相互補完的というべきであり、一方が公式の採択文書で他方は公式の採択文書でないという区別は妥当ではありません。
国際会議のNGO文書がみなそうであるように、「ハーグ・アジェンダ」も、どこかで「ハーグ平和アピール総会」のようなものを開いて審議をしたのち採択されたという性格のものではなく、成立過程を見るならば、「ハーグ・アジェンダ」も「10の基本原則」もいずれもインフォーマルに成立したものなのです。様々な意見の多数のNGO・個人が参加するNGO国際会議が作成する文書は、各国議会の法律や国際機関の決議のようには厳密な手続をとらない場合が多く、それは極めて困難です。NGO文書を、議会手続の類推で捉えることには無理があり、またそのことが一般には分かりにくくなるのかもしれません。
これについて色々な意見はあるかもしれませんが、日本ハーグ平和アピール運動としては日本の憲法9条の非軍事平和思想が会議の最終日に発表された「10の基本原則」に取り入れられたことを積極的に評価し、世界の恒久平和を実現するための選択肢としての憲法9条の世界化のための取り組みをしていこうと改めて確認します。


▲パンフレット「戦争のない世界の実現を-公正な世界秩序のための基本10原則-」についてのお詫びと訂正

昨年、日本ハーグ平和アピール運動が発行しましたパンフレット「戦争のない世界の実現を-公正な世界秩序のための基本10原則-」の1頁文中に下記の記述がありましたが、事実と異なることが確認されました。
この「公正な世界秩序のための10の基本原則」がどの様に確認されたか、その光景を紹介します。
アフリカの少年たちのグループが、1項目ずつ大きな声で訴えかけるという形式がとられました。
最初の子どもが「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」というと、2番目の子どもが「すべての国家は、国際司法裁判所の強制管轄権を無条件に認めるべきである」といいます。
3番目の子どもが「各国政府は国際刑事裁判所規程を批准し、対人地雷禁止条約を実施すべきである」というと、次の子どもが「すべての国家は“新しい外交”を取り入れるべきである。新しい外交とは、政府、国際組織、市民社会のパートナーシップである」といいます。次の子どもが「世界は人道的な危機の傍観者でいることはできない。しかし、武力に訴えるまえにあらゆる外交的な手段が尽くされるべきであり、仮に武力に訴えるとしても国連の権威のもとになされるべきである」といいました。そして次の子どもが「核兵器廃絶条約の締結をめざす交渉がただちに開始されるべきである」といいました。続いて「小型武器の取り引きは厳しく制限されるべきである」と次の子どもがいい、「経済的権利は市民的権利と同じように重視されるべきである」と次の子どもが続け、また次の子どもが「平和教育は世界のあらゆる学校で必修科目であるべきである」といいます。最後の子どもが「‘戦争防止地球行動'の計画が平和な世界秩序の基礎になるべきである」と結びました。その後、その10項日を書いた文書がアナン国連事務総長らに手渡されました。
このように、基本10原則の第1番目に、日本国憲法9条が引用されたのです。

ニューヨークのハーグ平和アピール国際事務局に問い合わせた結果、この記述は誤りであることが確認されました。閉会式で子供たちが読み上げたのは「10の基本原則」ではなく「ユース・アジェンダ」(「少年憲章」)でした。閉会式のこの場面について当方の関係者の誤解があり、それがそのままパンフレットに記述されてしまいました。編集に際して当方のチェックが行き届かず、誤った記述を掲載してしまいました。今後、パンフレットからは当該記述を削除いたしますと共に、皆さまに誤解を与えましたことを深くお詫び申し上げます。

「日本ハーグ平和アピール運動」(HAP・JAPAN)     
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