◆アメリカ合衆国ブッシュ政権になってはじめての未臨界核実験強行◆
asahi.comなどによる



米エネルギー省は2001年9月26日、米太平洋時間同日午後1時47分(日本時間27日午前5時47分)にネバダ州の実験場で、ブッシュ政権になって初の未臨界核実験を実施したと発表した。昨年12月以来の実験で、97年7月からの通算では14回目。広報担当者は「成功だった」としている。
 非核保有国などは、核爆発を伴う核実験を禁止した包括的核実験禁止条約(CTBT)を骨抜きにすると反発しているが、ブッシュ政権はCTBTを死文化する方針を示しており、政府機関研究者の間には地下核実験再開を期待する声も出始めている。
「核兵器使用の予告なのか」。包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議を控えていただけに、「核の威嚇」と受け止めた長崎県内の被爆者や平和団体からは9月27日、一層激しい怒りの声と抗議行動が相次いだ。
 被爆者や市民団体は一様に危機感を募らせた。長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は「従来の実験とは性格が違う。核による威嚇で、これまで以上の憤りを覚える」と語った。 同市松山町の平和公園では同日正午過ぎ、県原水禁や県被爆2世の会など5団体が呼びかけ、座り込みの抗議。平和祈念像前で約50人が参加し、米国の行為に反対する横断幕を掲げた。 県原水禁の中崎幸夫会長は「米国はテロ報復行動で核兵器の使用もあり得るとしている。今回の実験は、時期が時期だけに、世界に対しての脅しともとれる。核廃絶を願って活動してきた我々が反対の意思表示をしていかねばならない」と訴え、抗議文を米大使館と日本政府に送った。
 同時多発テロへの報復準備が進む中、米国が未臨界核実験を行ったことに対し、広島県内でも27日、被爆者団体や市民団体が抗議の座り込みをし、自治体が相次いでブッシュ米大統領あての抗議文を送った。
 正午過ぎ、広島市中区の原爆慰霊碑前で県被団協(金子一士理事長)や県原水協のメンバー約80人が座り込みをした。
 原爆犠牲者とテロ犠牲者への黙とうの後、末宗明登・県被団協事務局長が「今回はこれまでの核実験の延長ではない。テロ報復へ向けて新しい核兵器の開発につながるものだ」と訴えた。
 もう一つの県被団協(藤川一人理事長)のメンバーら約70人も午後6時から原爆慰霊碑前で座り込みをした。坪井直事務局長は「米国は無差別テロを非人道的行為だとしているが、原爆を投下したことはどうなのか。いかなる理由でも核実験は許さない」と述べた。
 三良坂町平和を願う会(会長、湯免龍夫・三良坂町長)も、町平和公園で抗議の座り込みをした。三良坂中の生徒50人を含む会員ら127人が座り込んだ。
 湯免会長は「返す言葉もないぐらい、動揺している。我々の小さなつどいがアメリカに、世界に届くように」とあいさつ。米国に対し、今後の核実験計画を即時中止し、テロ対策については国連の枠組みの中で対処するよう求める抗議文が読み上げられた。
 藤田雄山知事は「本県をはじめ各方面の再三にわたる中止要請にもかかわらず、未臨界核実験を強行したことに強い憤りの念を禁じ得えません」とするブッシュ大統領あての抗議文を米国大使館を通じて送った。
 広島市をはじめ福山、因島、府中、三原、三次、廿日市、大竹の各市長らもブッシュ大統領や駐日米大使あての抗議文を送った。