過去の活動

 1.1998年度定期総会報告

1998年度定期総会

 

過去一年間の活動報告

今後一年間の運動方針

 

8月8日、長崎で開催した総会で承認

T 核をめぐる国際情勢

1 この一年間の国際世論の核兵器  廃絶への流れ

 

 わが協会が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)、日本生活協同組合連合会(生協連)と協力して取り組んだ世界法廷運動の成果として、1996年7月、国際司法裁判所(ICJ)が「核兵器の使用と威嚇は一般的に人道法に反する」、「全ての国は核軍縮交渉を完結させる義務がある」との勧告的意見を発表した。

 その後、核兵器廃絶運動を進める世界の国々、非政府組織、市民たちが、この勧告的意見を様々な方法によって利用することによって、核兵器廃絶の実現に積極的な影響をもたらし続けている。

 勧告的意見の活用によって、核兵器を肯定する国の政府や肯定論者が核兵器廃絶を要求する運動を法的に非難する力を弱めるうえで、大きな効果をもたらしており、一方で、核兵器廃絶運動を国連内部や世界の市民に広めるのに有利な状況をつくりだしている。

 

1)国連関係における有利な動き

@ 反核国際法律家協会(IALANA)、 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、 国際平和ビューロー(IPB)及び技術者・科学者の国際ネットワークが、ジュネー ブ軍縮会議の20ヶ国の代表を対象にモデ ル核兵器条約討議のための非公式円卓会議 を開催(97年8月)。

A 第52回国連総会本会議は、「国際司法裁判所の勧告的意見を受け、核兵器廃絶条約の早期締結につながる交渉を98年に開始することを求める」としたマレーシア決議案を賛成116、反対26、棄権24、投票不参加19で採択。日本は棄権、中国は賛成(97年11月)。

B IALANAが中心となって完成した「モデル核兵器条約」をコスタリカの国連代表がアナン国連事務総長に対し、「正式の国連文書として全ての国連加盟国に配布する」ことを要望。これを受けて国連は、モデル核兵器条約を国連公用語の6ヶ国語に翻訳し、公式文書として加盟国に配布した(98年1月)。

 

2)国連外の、核をめぐる国際的な有利    な動き

@ 国際運動・・・「HAP'99(ハーグ平和アピール1999年)」と「アボリション 2000」

〇 HAP'99

  IALANAはロンドンでの加盟組織の会議ですでに発足したHAP'99活動計画参加準備について討議した

  (97年11月16日)。

  HAP'99は、IALANA、IPPNW、IPB、WFM(世界連邦主義者運動)が呼びかけた来年5月ハーグで5千−1万人規模で開催予定の国際会議である。

○ 「アボリション2000」

   西暦2000年までに核兵器廃絶条約をめざす「アボリション2000」の運動参加団体は、98年1月12日現在で、894団体に達した。

  この運動は、「時間枠を定めて核兵器を禁止し廃棄する条約を2000年までに締結するなどの公約を求める」個人を対象にした署名運動を開始、これを国連総会、ジュネーブ軍縮会議、核不拡散条約再検討会議、人権委員会、核保有国、核兵器疑惑国に提出すると発表(97年8月6日)。

A 世論

  ○96年12月の世界の63名の元司令官・将軍の反核声明に続いて、元・現大統領・首相を含む世界の文民指導者117名が核兵器に関する声明を発表(98年2月2日)。

 ○核兵器に関するカナダの世論調査で「カナダが核兵器廃絶協定の交渉をすること」に賛成93%(カナダ平和同盟98年2月26日調査)。

 ○核兵器に関するイギリスの世論調査で「イギリスが核兵器を禁止・廃棄する国際条約の交渉を促進すべきである」ということに賛成87%(非核自治体全国運営委員会97年9月調査)。

B 各国の状況

  〇カナダの核政策見直しについて、下院外交貿易常設委員会は非公開公聴会を開催、報告書を今夏までに議会に提出予定。

  〇英国レディング刑事法院(バークシャー州)の陪審は、トライデント・ミサイル組み立て核兵器施設のフェンスを破って侵入した二人の女性に対する刑事損害法による1万ポンド約225万円)訴訟で、国際司法裁判所の勧告的意見に照らし、被告の行為は、違法な核兵器の製造を止めさせるための行為であり合法であるとの主張を受け入れ、有罪の評決をすることができなかった(98年3月26日)。英国の裁判所において、その法源であるコモン・ローに核兵器の違法性に関する国際法が組み込まれることを認めた最初の例となった。

C 新たな「核兵器廃絶をめざす国家連

 合」(「新アジェンダ連合」)の出現

 〇アイルランドのアンドリュース外相は、ダブリンにおいて、アイルランド、スウェーデン、スロベニア、エジプト、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、ニュージーランドの8ヶ国を代表し、「核軍縮が進まないのは、核兵器国に政治的意志が欠如しているからである。我々は共同して核兵器のない世界という目標を達成する決意である」という趣旨の8ヶ国外相声明を発表した。同外相は、この8ヶ国を新アジェンダ連合と呼び、核兵器廃絶という同じ志を持った国家の新しい連合である、と言明した(98年6月9日)。

   *本誌22-24頁参照

 

3)北半球の新たな非核地帯構想

 〇ウズベキスタンの首都タシケントで政府間の国際会議「中央アジア非核兵器地帯」が開催、56ヶ国と16の国際組織(IALANAを含む)が参加(97年9月14−16日)

 〇長崎市長が平和宣言で東北アジア非核地帯構想の実現を訴え、広島市長が日本政府に対し核の傘にかわる安全保障体制を要請した(97年8月)。

 

2 核保有国の抵抗と妨害

 

1)国連関係における核保有国の妨害

 世界の核兵器廃絶への動きに対し、核保有国とその影響下の国の政府による抵抗も依然として強い。

 〇国際刑事裁判所(ICC)設立のための条約草案99条が国連本部設立準備委員会で採択された(98年4月)後、設立のための外交委員会が開かれ、設立条約案は採択されたが、核兵器使用を戦争犯罪とするインド修正案は否決された(ローマ会議、98年6月15日−7月17日)。

  この会議で果たしたNGOの役割は大きく、今後に期待される。

 

 〇核不拡散条約(NPT)再検討会議第2回準備会(ジュネーヴ、98年4月27−5月8日)において、勧告的意見F項を受けた国連総会決議による「核軍縮交渉の完結義務による核兵器廃絶条約締結交渉」の提案も、日本の林軍縮大使らの「非現実的」という主張など巧妙な議事運営で議論の機会も与えられず、見るべき成果を得られなかった。

 

2)核保有国は依然として核兵器廃絶の意志がない

 〇クリントン大統領の命令 (97年11月):レーガン大統領の「長期にわたる世界的な核戦争に勝利せよ」という命令を変更し、核兵器の主要任務は「敵が合衆国や同盟国に核兵器を使用することを抑止すること」とする。

  この大統領命令で、核兵器の先制使用、非核兵器国が大量破壊兵器を使用したときに核兵器での報復を容認。

 〇98年度米国防報告で、「冷戦時代と比べ核の安全保障上の役割低下」と明記(98年2月3日)。

  役割の低下を認めながら核兵器廃絶の方針はない。

 〇コーエン米国防長官は、イラクが生物・化学兵器を使用すれば「迅速で壊滅的な報復を受ける」と限定核使用を示唆(98年2月2日)。

 〇英国空軍は非核部隊になり、英核戦力は、ミサイル発射原子力潜水艦に単純化(98年4月)。

  核兵器の有効利用であり、廃絶の方向ではない。

 

3)核保有国は核開発のために未臨界実

 国連総会の包括的核実験禁止条約採択(96年9月)に反して、米国は97年7月以降3回にわたり未臨界核実験を実施した。ロシアも続いて11月に同じ実験を実施した。

 これは、核兵器の維持・保存と効率のよい核兵器開発のために必要な実験を実施していること、従って、核兵器の廃棄の意志がないことの証明である。

 

3 印パ核実験の意味するもの

 

 インドは98年5月11日、13日に合計5回、続いてパキスタンは5月28日、30日に合計6回の核実験を実施した。

 

 インド、パキスタンの核実験の実施と核保有国宣言は、相互に、相手国に対し、核兵器の使用を前提として威嚇するものであり、これは国際司法裁判所の勧告的意見に照らしても違法であり、許されない。また、一方が主権・国家利益の防衛(自衛権)の名目により核兵器を使用したならば、相手国は当然に自衛の名目で核兵器を反撃として使用することになり、双方とも相手方の核攻撃によって壊滅するだろう。

 インド、パキスタンは、いずれもNPT(核不拡散条約)に加盟していない。従って、条約上の不保持義務も核軍縮義務もない。従って、核保有国がインド、パキスタンの核実験や核保有国宣言を非難する条約上の根拠はない。核保有国がインド、パキスタンを非難するのは理論矛盾である。なぜなら、インド、パキスタンが核保有国宣言をする根拠は、核保有国が核保有を正当化する根拠(国家利益の防衛)と同じだからである。核保有国のインド、パキスタンの核実験・核保有宣言に対する非難は、自分で自分を非難し侮辱しているようなものなのだ。明白なことは、インド、パキスタンの核実験は、核保有5ヶ国の核独占制度(核不拡散条約)の破綻宣言であり、核独占体制への挑戦を意味している。

 インド、パキスタンに続いて新しい核保有国の出現の誘惑、中小国家による核兵器開発競争の誘発、さらには新たな核戦争の危機の到来を阻止するには、核保有国が自ら核兵器廃絶を決断し、全ての国による核兵器廃絶条約締結しか方法はない。

U 国内際情勢

 

1 日本政府は、依然として米国に追従した核政策

 

 〇日本政府は、第52回国連総会本会議で、「国際司法裁判所の勧告的意見を受け、核兵器廃絶条約の早期締結につながる交渉を98年に開始することを求める」マレーシア決議案に棄権(97年11月)。

 〇日本政府は、インドとパキスタンの核実験に抗議したが、米国の未臨界核実験には抗議せず。

 〇日米防衛協力のための指針政府間合意、米国の核の傘依存の再確認

  (97年9月23日)。

 〇参議院予算委員会で「核兵器使用は合憲」と政府答弁(98年6月17日):

  佐藤謙防衛庁防衛局長「自衛のための最小限度を超えない・・・範囲内に留まるものである限り、核兵器であると通常兵器であるとを問わず、憲法第9条2項の禁ずるところではない」。

  大森政輔内閣法制局長官「核兵器の使用も、わが国の防衛をするために必要最小限度のものに留まるならば、それも可能である」。

 〇核兵器不拡散条約再検討会議第2回準備委員会:

    林大使「核軍縮の今後の展望は、はっきりしていない。ある国々から時間を区切った核兵器廃絶に向けたプログラムが提案されているが、わが国としては、非現実的であるように思われる」(98年4月27日)。

 〇国際刑事裁判所(ICC)設立のための外交会議:

    小和田国連大使は、国際刑事裁判所が管轄権を持つ戦争犯罪の範囲は、「国際慣習法の一部として既に具体化されたとは見なせない罪については、含まれるべきではない」と演説(98年6月15−7月17日)。

  つまり核兵器の使用を含めるべきでない、という見解。

 

2 市民と自治体の活動

 

 〇米国の未臨界核実験に、地方自治体首長・議会議長、被爆者、市民の抗議、座り込み、デモなど(97年7月)。

 〇日本被団協の被爆体験を伝えるメッセージ「伝えようヒロシマ・ナガサキ、なくそう核兵器」運動、71名の呼びかけ人が呼びかけ発足(97年7月16日)。

 〇第5回非核自治体全国草の根交流会「日本と朝鮮半島を非核地帯に」

  

  (97年7月21日)。

 〇第4回世界平和連帯都市市長会議、広島と長崎で開催(115都市市長)

  (97年8月5−9日)。

 〇日本非核宣言自治体協議会全国会議(97年8月5日)

 〇平岡・広島市長、平和宣言で「日本政府に核の傘に頼らない安全保障体制を要求」(97年8月6日)

 〇伊藤・長崎市長、平和宣言で「米国の未臨界核実験に抗議、東北アジア非核地帯創設を」(97年8月9日)。

 〇米国の2度目の未臨界核実験に抗議

    (97年9月)。 

 〇ロシアの未臨界核実験に抗議(97年11月)。

 〇高知県、入港に非核証明を求める神戸式採用(98年2月23日)−外務省が否定的見解。

 〇米国の3度目の未臨界核実験に抗議。広島市・長崎市・広島県・沖縄県・東京都などの首長ら(98年3月)。

 〇インド・パキスタンの核実験に抗議。日本政府、各自治体、広島弁護士会など

  (98年5月)。

 

V 当協会の活動

 

 

1 政府交渉・抗議

 

  〇国連総会の核軍縮交渉開始要求、マレーシア案への支持を求める政府交渉(97年9月と11月)

 〇米国大統領へ「イラクへの核兵器の使用の禁止を求める要請」  (98年2月3日)。

 〇インドの核実験に対する抗議  (98年5月)

 〇 パキスタンの核実験に対する抗議  (98年5月)

 

2 当協会主催または関与した

  シンポジウムなど

 

  〇「今こそ核兵器廃絶を−勧告的意見を受けて」  97年9月7日  広島

   広島弁護士会・広島市・広島県医師会の共催

 〇シンポジウム「安保・基地・核を語る夕べ」  97年11月29日  広島自由法曹団広島支部主催

 〇シンポジウム「核兵器のない21世紀をめざして」−HAP'99運動の成功に向けて日本準備委員会第1回会合−

  98年3月16日 東京

  当協会・世界連邦建設同盟の共催

    HAP'99の呼びかけ国際4団体に加盟する当協会、世界連邦建設同盟、IPPNW日本支部広島県医師会、IPB加盟日本原水協、HAP'99の運営委員会加盟の太平洋軍備撤廃運動、日本生協連、日本被団協などが参加

 〇「被爆者を励ます集い」  98年3月24日 東京

  東京被爆者後援会主催

  浦田IALANA理事並びに池田当協会事務局長が講演

 〇国際シンポジウム「日米ガイドラインとアジア太平洋における平和の創造」  98年5月16日 東京

  法律家4団体(日本国際法律家協会、日本民主法律家協会、自由法曹団、青年法  律家協会弁護士学者合同部会)共催。

    日本、韓国、中国、マレーシア、フィリピンの各法律家の報告と討論。

  浦田理事が基調報告、問題提起、池田事務局長が東北アジア非核地帯構想の報告を行った。また、採択されたアピールに「来年の HAP'99への参加を呼びかけ」を入れた。

 

3 市民運動への参加

 

 〇日本被団協の被爆体験を伝えるメッセージ「伝えようヒロシマ・ナガサキ。なくそう核兵器」運動、71名の呼びかけ人が呼びかけて発足。  97年7月16日

  当協会の松井会長、池田事務局長も呼びかけ人となった。

 〇「東京原爆展」

  98年7月20−30日まで品川区大崎のオー美術館で開催された「東京原爆展」実行委員会代表3名の1人に当協会の池田事務局長が指名され、集会に参加。

 

4 学習会の開催、

  学習会への講師活動

 

 〇勧告的意見1周年生協ひろしま学習会  97年7月8日 広島

  講師 佐々木猛也・会員

 〇勧告的意見1周年生協ひろしま学習会   97年7月9日  福山

  

  講師 井上正信・会員

 〇憲法を学ぶ会例会「勧告的意見」  97年9月17日 武蔵野市

  講師 池田真規・事務局長

 〇日本被団協北海道ブロック講習会「勧  告的意見」97年10月3日 函館

    講師 同上

 〇日本被団協九州ブロック講習会「勧告的意見」  97年11月16日 鹿児島

   講師 同上

 〇東大・駒場祭「核兵器廃絶を考える」  97年11月22日 東京

  講師 同上

 〇東都生協学習会「核兵器廃絶を考える」97年12月6日 府中

  講師 同上

 〇東京非核の政府をつくる会「脅かされる人権」97年12月14日 豊洲

  講師 同上

 〇池上妙雲寺近江幸尚講座「核兵器廃絶へ」98年1月17日 品川

  講師 同上

 〇世田谷区主催平和講座「核兵器をなくすために」98年2月28日 世田谷

  講師 同上

 〇町友会とともに生きる会学習会「松谷訴訟と核兵器廃絶」98年6月6日

  講師 同上

 〇71氏の呼びかけによる被爆者集会  98年7月18日 東京 日本青年  館

  講師 松井会長

 〇東友会被爆者慰霊祭  98年7月26日 品川東海寺

  講師 松井会長

 

 これらの講師活動の他にも、各地で会員の講師活動が行われていると思われるが、その結果について、その都度、あるいはまとめて、事務局にご報告をお願いしたい。

 

5 協会の出版と会員の投稿

 

 〇機関誌「反核法律家」97年7月から98年7月まで8回

  19号 97.7.30 20号 97.9.30  21号 97.12.25 22号 98.1.30

  23号 98.2.28 24号 98.4.10  25号 98.6.15 26号 98.7.30 〇核兵器廃絶条約案

  97年9月10日 当協会発行。

  勧告的意見を受けて、核兵器廃絶につながる国家間の交渉を促進するためのモデル核兵器条約がIALANAの法律家が中心になって作成された。当協会の呼びかけで研究者の協力を得て修正案を提出し、条約案は完成し、97年4月、国連本部で発表された。この条約案を翻訳し、従来の発表された核兵器禁止条約案も付録に付けて、出版にこぎつけた。

 〇当協会の会員浦田賢治・佐々木猛也・井上正信・池上忍・内藤雅義・池田真規らは、勧告的意見や核兵器廃絶問題などについて、各種の定期刊行物(弁護士会会報、法律家団体機関誌、月刊雑誌、季刊雑誌、法律雑誌など)に論文などを投稿しているが、その他の会員の投稿、出版物について、全ては把握できていない。

 

 各会員の投稿について、その都度、あるいはまとめて、事務局にご報告をお願いしたい。

 

6 運動の提起

 

 当協会は、国際司法裁判所の勧告的意見において、「核兵器の使用は絶対違法」の立場で個別意見を展開し、任期満了で退官したシャハブディーン氏の招待を昨年秋に企画し、同氏と直接電話連絡を取り了解を得たが、同氏の激務のため予定がつかず調整を続けたが、本年6月末、最終的に見送りとなった。

 一方、昨年来、IALANA本部からの呼びかけによりる来年5月開催の「ハーグ平和アピール1999年」(略称HAP'99)行事への参加準備を提起し、活動を続けてきた。

 

 〇HAP'99活動参加呼びかけ 981

   当協会は、日本被団協、国法協、日本生協連に呼びかけて、来年の5月11日から6日間、オランダのハーグで開かれる国際市民集会への参加準備を始めた。

  この集会の目的は、核兵器も戦争も貧困もない21世紀をめざして、@核兵器の廃絶を含む軍縮、A国際人道法の強化、B国際紛争の平和的解決、というテーマで、全世界から5千−1万人の市民を集めて、個別的、全体的集会を開くという計画である。

  本年9月に世界各地からの参加登録を受け付け、これをもとに、運営委員会が総合的な計画(テーマ別に分類、会場の割り当てなど)を立てることになる。

  呼びかけ団体は、IALANA、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)、IPB(国際平和ビューロー)、WFM(世界連邦運動)である。

 

 

 〇シャハブディーン招待計画 981

  当協会の呼びかけで、東京、大阪、広島、長崎において、シャハブディーン招待計画実行委員会が結成され、今年に入り、毎月、実行委員会を開催して準備を重ねてきた。

  長崎は、長崎平和研究所を中心に長崎市の他、学者、弁護士、被爆者、平和団体などが参加。広島は、弁護士会、広島生協、広島市、広島県医師会などが参加。

  東京は、国法協、日本被団協、日本生協連、大学生協、東京反核医師会などが参加。

  大阪は、法律家団体を中心に約20団体が参加して準備を進めた。

    しかしながら、シャハブディーン氏が、旧ユーゴスラヴィア国際戦争犯罪法廷の判事としての仕事が次第に多忙となり、1ヶ月先の予定も確約できないような状況になってきた、という理由で予定された期日が3回にわたり延期され、同氏の最後の希望は10月頃と大幅に延びることになった。

  6月末に同氏より、このような状況では日本の皆様に大変ご迷惑をかけることになるので、今回の来日を辞退させて欲しい、との申し入れがきた。東京実行委員会で検討した結果、国際戦争犯罪法廷の判事の激務を考えれば、お互いに悪い条件のもとでの今回の招待は残念だが見送るしかないという結論に達した。しかし、このシャハブディーン招待実行委員会は、来年のHAP'99の宣伝と参加準備のための会合として続けることに切り替えることにした。

 

 

7 国際会議への派遣と

  IALANAローマ総会の報告

 

 〇IALANAロンドン会議に浦田賢治IALANA理事出席。

  97年11月15−17日

 〇IALANA理事会(ローマ)に浦田賢治IALANA理事出席。

  98年6月26日

 〇IALANA総会(ローマ)に浦田賢治IALANA理事、佐々木猛也・成見幸子副会長、池田真規事務局長、大久保賢一・椎名麻紗枝・山田寿則・岡田啓資・芳澤弘明会員、元百合子通訳、工藤幸枝事務局員が参加出席。

  98年6月27−28日

  ローマ総会の討議は、法律家の国際反核運動の充実した実状を反映したものであったので、緊急に、機関誌「反核法律家」26号をローマ総会報告特集として編集した。

 

8 ローマ法王へのメッセージ

 

 IALANA総会出席代表団は、法王に対する当協会会長の「世界へ向けての核兵器廃絶の呼びかけと、原爆被害者を勇気づけるメッセージの要請」、広島市長と長崎市長からの法王宛のメッセージをローマに持参した。総会終了の翌日は、法王庁はミサのため閉鎖となり、ローマ駐在のカトリック中央協議会のレイモンド・レンソン司祭に託することにし、法王庁国務長官に渡していただくことを約束して、持参した3文書を同氏に渡した。

9 特別カンパのお礼

 

 IALANA総会出席代表団の通訳・事務局員同行経費、IALANA本部への贈呈用の原爆パネル40枚、IALANA本部とローマ法王に贈呈用の原爆被害写真集などの共通経費のために特別カンパをお願いしたところ、合計68万円のカンパをいただいた。全経費に10万円不足であったが、当協会の一般経費から資質した。ご協力に厚くお礼を申し上げる。

 

10 参議院選挙立候補者への

  アンケート調査

 

 7月の参議院選挙立候補者中300名(比例区の全候補者158名、選挙区の候補者中142名)に対し、@期限を定めた核兵器廃絶条約の締結の是非、Aこれに日本政府がイニシャティブを取ることの是非につきアンケート調査を実施。126人から回答(回答率42%)が寄せられ、124人が@とAに賛成。反対は@とAに各1名ずつ。

 

11 当協会のこの1年間の活動の      問題点

 

1)協会の組織問題と会員拡大

 97年の総会で討議された、理事会の充実(欠席者が多い)、委員会活動が弱い、という組織的活動の欠陥は、この1年において克服することができなかった。

 会員は、98年1月以降、24名新たに入会、98年7月24日現在408名である。

 

2)協会の財政問題

 協会の財政は、別紙財政報告のとおり、赤字財政であり、この克服は会員の拡大による年会費の増収と恒常的な特別分担金の増加しかない。

 

 

W 当協会の運動方針

1 目標と展望

 

1)目標−21世紀の早い時期までに核兵器廃絶条約の締結を

2)展望−核保有国は強大であるが、世界の世論に追いつめられている。

   核兵器廃絶は世界の世論として固められつつある。

     ハーグ平和アピール1999年  (HAP'99)核兵器・戦争・貧困の ない21世紀をめざす全地球的国 際平和会議。

 

2 当面の基本的運動目標

 

1)日本政府の「核兵器の使用と威嚇の違法性を認めない」政策を「違法性を認める」政策に変更させる。

2)朝鮮半島と日本を非核地帯とする東北アジア非核地帯の実現をめざす。

3)有事立法に反対し、基地撤去を求める港湾・空港の非核化のため、神戸方式にならって条例制定運動を起こす。

4)モデル核兵器条約を活用して、核兵器廃絶の具体的な手順について議論する。

 

3 運動の方法

 

1)政府、国会議員、政党、地方自治体     に体的課題をもって働きかける。

2)日本被団協、日本生協連、法律家団体、弁護士会などと共同する。

3)個別目的に対応する委員会をつくり活動する。

4)市民運動の学習会に講師として協力する。

5)資料の収集、宣伝資料・パンフレットの作成。

 

4 組織的な活動

 

1)委員会の活動

  当協会の活動はまだ組織的な活動とはなっていない。多様な課題に会員が自分の可能な範囲で共同して活動する委員会による活動方式を早急に実現したいので、会員の協力をお願いする。

  97年度活動方針で、組織財政委員会、機関誌編集委員会、講師養成並びに講師用資料作成委員会、核兵器廃絶総合研究委員会などが提起されたが、実現していない。

2)理事会の活動

  理事会の活動が弱いのが実状である。理事会の充実した討議が必要である。この問題の解決に、理事の知恵をだしていただきたい。

  理事会の充実のために工藤幸枝事務局員(非常勤)を雇用し、理事会議事録を理事に送り、議題を明示することにした。

  遠距離の地域に事務所を持つ理事が  理事会に出席することは困難なので、その地域に独立した支部をつくることによって解決することができる。埼玉県支部の結成が可能な見通しとなってきた。神奈川県、千葉県、大阪市、広島県の支部が検討課題である。

3)各支部の活動を本部で掌握する。本部と支部の間の活動情報の交換の活発化。

 

5 会員の拡大

 

 会員数を少なくとも500名とする目標を立てたが、漸く400名台に到達した。しかし、財政的には600名を必要とする。会員各位が1人増やすだけでも800名の会員になる。そうなれば、協会の活動も充実し、核兵器廃絶のための法律家運動により大きな仕事ができるようになるので、会員の積極的なご協力をお願いする。

 

6 財政

 

 別紙財政報告の通りである。現在の会員の会費を財源とする財政では、協会の活動費を賄うことは到底できない。しかし、協会は、活動報告に見られるように、法律家の核兵器廃絶運動に大きな仕事をしてきたし、重要な役割と責任があるので、この財政問題を克服することに全力を尽くしながら、活動を続けなければならない。

なければならない。

 財政の危機を解決するために、会費の値上げではなく、会員の600名への拡ヶ月の分担金を5000円以上、期限を を定めて負担してもらう特別分担会員制度をつくる方法を提案したい。会員のご協力をお願いする。

                以上