2017年7月7日、国連の核兵器の全面廃絶のために核兵器を禁止する条約交渉会議は、核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons)を賛成122、反対1(オランダ)、棄権1(シンガポール)で採択した。国連加盟国193カ国の約63パーセントに当たる多数の賛成であった。
2020年10月24日にホンジュラスが批准したことで、批准国(加入国を含む。)が核兵器禁止条約の発効に必要な50か国に達し、同条約第15条に基づき、90日後の2021年1月22日に同条約が発効することとなった。
新型コロナウィルス(COVID-19)感染症の世界的危機が終息をみないにもかかわらず、軍拡に突き進む世界情勢の中、核兵器禁止条約の発効は「核兵器も戦争もない世界」を実現する上で、画期的な一歩となるものである。
私たちは、核兵器禁止条約の発効確定を心から歓迎する。
核兵器禁止条約は、前文において、核兵器が二度と使用されないよう保証するための唯一の方法は、核兵器の完全な廃絶であるとし、被爆者(hibakusha)及び核実験の被害者の苦痛と損害に留意し、核兵器の法的拘束力のある禁止こそ、核兵器のない世界の達成及び維持に向けた重要な貢献となること、これは、国家的・集団的安全保障に資する最高の地球的公共善(a global public good)であるとしている。
また核兵器禁止条約は、同条約第4条で核兵器保有国にも条約への加盟の道を開く仕組みを規定している。世界各国は、核兵器禁止条約への加盟により「核兵器も戦争もない世界」の実現を目指すことが最も現実的である。
ところが、唯一の戦争被爆国である日本政府は、核兵器保有国と核兵器禁止条約賛成国との橋渡しの役割を果たすとして、核兵器禁止条約に署名も批准もしていない。日本政府の態度は、アメリカの核の傘に依存するという核抑止論に基づくものである。このような日本政府の態度は、核兵器の使用がもたらす破滅的な人道上の結末に向き合っておらず、唯一の戦争被爆国として許されるものではない。日本政府は率先して核兵器禁止条約に署名・批准すべきである。少なくとも日本政府は、核兵器禁止条約に署名・批准するまでの間、核兵器禁止条約発効後の締約国会議にオブザーバーとして参加すべきである。
私たちは、核兵器保有国や日本をはじめとする核依存国が早期に核兵器禁止条約に署名・批准するよう、この条約が核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、非核兵器地帯条約などと相まって、一日も早く「核兵器も戦争もない世界」が実現するように、法律家として、被爆者をはじめとする平和を愛する世界各国の人々と協力し、引き続き努力することを誓うものである。